財務戦略会計士の藤井です。

テクノロジーが発展するにつれて、資金調達も新しい形が誕生しています。

その最たるものが不特定多数の個人から資金調達を行う「クラウドファンディング」というのもです。

このクラウドファンディングというもの、何やら新しくてイケてるイメージがあるのでしょうか。

しかし、すべての手段には良し悪しがあります。
このクラウドファンディングも、ある人にとっては使いやすい資金調達手段ですが、別の人にとっては相性が悪い、ということもあります。

ということで、今回は資金調達の専門家である私からみたクラウドファンディングの使いどころについて思うところを書いていきます。

今新たな資金調達手段を検討している
テストマーケティングの一環として使いたい

本日はこのような疑問にお答えします。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとはクラウド(群)の名の通り、不特定多数の個人からファンディング(資金調達)を行うものです。

従来の資金調達シーンにおいては、特定の誰かから調達することがほとんどでした。

たとえば、銀行融資であれば資金の出し手は銀行になりますし、出資であれば特定の投資家やベンチャーキャピタルです。

これに対して、クラウドファンディングは、顔も分からない不特定多数の第三者一人一人から少額の資金を調達することになります。

銀行や投資家は融資・出資先に対して平たく言うと儲かることを求める一方で、クラウドファンディングですと、基本的には「起案者の想い」に共感して資金が集まる点が大きく違います。

つまり、クラウドファンディングはビジョンドリブンな資金調達手段であると言えるでしょう。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングにもいくつか種類があり、大きく分けて「寄付型」「購入型」「融資型」「株式型」があります。

寄付型

プロジェクトへの想いに共感した個人が応援資金を提供する形のクラウドファンディングです。

以前から個人に対して寄付金を募る動きはありましたが、寄付型クラウドファンディングはその行為を完全にインターネットで行うことが画期的だったと思います。

寄付型という名前の通り、基本的に資金の出し手に対してはリターンはありません。

しかし、寄付先の団体によっては「寄付金控除」という所得税法上の控除が取れる場合があります。

購入型

新商品などを開発する際に、リターンとして新商品を提供する代わりに個人から応援資金を募る手法です。

寄付型と一緒で応援資金をもらうことは似ていますが、大きな違いとしてはリターンがあるかどうかです。

購入型は商品がリターンとなることがほとんどで、実質的には「新商品の開発資金」を募るという性格が強いです。

別の視点から見ると、購入型は「テストマーケティング」としての利用価値が高いです。

量産するにはニーズがどれくらいあるか分からないけど、市場でニーズを試してみたいという場合には、資金調達できるだけでなく実際に販売もできるので一石二鳥です。

融資型

融資型はクラウドファンディングのプラットホームが個人から融資資金を募り、その資金をもとに事業者にお金を貸し付ける手法です。

プラットホームを間に挟む形になりますが、実質的には不特定多数の個人から融資を受けている状態となります。

この融資型においては、銀行融資のように審査が厳しくなく手軽に資金調達を行うことができるのはメリットと言えるでしょう。

一方で、投資家たる個人もそれなりのリターン(3-8%)を期待しているので、借りる側としては銀行融資に比べてかなり高い利息を支払うことになりますし、借入期間も1-2年程度と短めです。

株式型

最後に株式投資型です。
この株式型においては、スタートアップの株主に個人がなれるということで、サービス開始当初から注目を浴びてきました。

というのも、普通であれば一般の個人がスタートアップに出資できる機会はほとんどなく、基本的にベンチャーキャピタルなどが資金の出し手になるからですね。

ただし、そのような個人の投資家が出資できる金額は法律上1社につき50万円と決まっており、出資を受ける事業者側も1年につき上限1億円と資金調達の金額には制限があります。

そのため、株主数が数百人程度まで膨らんでしまい、結果として株主の反社チェックや株主管理が煩雑になるのは大きなデメリットと言えるでしょう。

株主管理に関しては上場審査において結構クリティカルだったりするので、VCによっては株式投資型クラウドファンディングで資金調達したスタートアップを避けるところもあると聞きます。

クラウドファンディングの正しい使い方

以上クラウドファンディングの4つの累計を解説してきましたが、これらをどのようにして使いこなせばよいでしょうか。

クラウドファンディング共通の特徴として「共感・応援」されるプロジェクトの資金調達額が伸びるというものがあります。

これは、銀行やVCなどの組織ではなく、個人をターゲットにしているため致し方ない性格であります。

そのため、まずはどの類型であったとしても個人から「共感・応援」されるべきものであるか再度確認するとよいでしょう。

その上で、NPO的な立ち位置であれば「寄付型」、ハードウェアを作る会社であれば「購入型」、一般的な営利企業は「融資型」、スタートアップは「株式型」を選択するとよいでしょう。

ただ、ここまで書いておいて恐縮ですが、そもそも投資のプロではない不特定多数の一般個人から本当に資金調達すべきかは、一度考えておくべきです。

というのも、経営支援的な側面を考えるのであれば、個人よりも金融のプロである銀行やVCを味方につけた方がよいと考えられるためです。

さらに、クラウドファンディングのプラットホームは不特定多数の個人を管理しないといけないので手数料も高いです。

例えば、株式型だと資金調達額の22%を手数料としてもっていかれるプラットホームもザラにありますし、融資型でも銀行よりも圧倒的に利率が高いです。

これはうがった見方かもしれませんが「銀行やVCから選ばれなかったために高い手数料を甘受してクラウドファンディングを使わざるを得なかった」という見方もできます。

個人に共感・応援された結果、売り上げが伸びるのであればまだ利用価値があると思いますが、単純な資金調達目的であれば手数料負けする可能性があるのも事実です。

プラットホーム利用料というコストと共感・応援された結果得られるベネフィットを比較して、クラウドファンディングを使うかどうか意思決定されることをおすすめします。