会計士の藤井です。

明けましておめでとうございます。
昨年は新型コロナウイルスの発生により、世界が大きく変わってしまいました。

融資という分野においては、資金繰り支援として新型コロナウイルス感染症特別貸付という融資メニューができ、実質無利子の大盤振る舞いな融資を利用した企業も多いことでしょう。

弊社にも、ありがたいことに日々多くのご相談が寄せられ、多くの会社様の資金調達支援をしてまいりました。

翻って2021年の現時点でもコロナウイルスは収束する気配がなく、むしろその勢いを増しているところです。

ということで、今年も引き続き資金繰りに注意し、余裕資金を持ちながら事業を展開していくことが求められます。

そこで、当記事では余裕資金を持つための最新の資金調達の手法を一覧化し、その使いどころについて現役の会計士が解説していきたいと思います。

最近資金繰りが悪化してきている
融資以外の資金調達手法を知りたい

本日はこのような疑問にお答えします。

融資だけが資金調達ではない

中小企業にとって最も身近な資金調達の手法は「銀行融資」でしょう。

銀行融資はその名の通り、銀行から借入を行う方法であり、資金調達の最もポピュラーな方法です。

しかし、最近では銀行融資以外にも様々な資金調達の手段が確立されています。

資金調達の手段をいくつか分類すると、以下4つとなります。

  1. 資産を裏付けとする資金調達
  2. 負債(債務)を負って行う資金調達
  3. 出資を伴う資金調達
  4. その他の資金調達方法

それぞれ解説していきましょう。

1.資産ベースの資金調達

最初に紹介したいのが資産ベースの資金調達です。
中小企業において、銀行融資以外の資金調達方法としてまずもって候補に挙がってくるものです。

といっても難しいことではなく、資産ベースの資金調達は主に2つに分かれます。「資産売却による資金調達」か「資産を担保とした資金調達」です。

資産売却による資金調達は単純に持っている資産を売却することでキャッシュに変えるというものです。

イメージしやすいのは固定資産となる機械や不動産などを売却することですが、最近では流動資産を売却することも可能になってきています。

例えば、売掛金(請求書)を売却する「ファクタリング」というものがあります。

これは、受取手形の「手形割引」と仕組み的には同じですね。どちらも売掛債権を早期に売却して手数料を引いた残額を現金化することです。

一方で、保有している資産を担保とした借入ということも選択肢としてはあり得ます。

こちらは換金性が高く、時価が高い資産であればあるほど担保としての価値があります。

例えば「証券担保ローン」というものがあります。
法人で上場企業の株式を保有しているのであれば、その株式を担保に出すことで借入を起こせるというものです。

また中小企業だと経営者が「小規模共済」や「倒産防止共済」に入っていることもあるでしょう。

実はこれらの共済を担保として、借入ができることをご存じない方も多いと思います。

小規模共済は最大掛け金の90%、倒産防止共済は95%まで借入を起こすことができます。

このように資産ベースの資金調達においては、資産を売却するか、売却しなくても担保に出すことで資金調達を図ることができます。

2.負債ベースの資金調達

次は負債を増やすことで現預金を増加させる資金調達方法です。

上記で紹介した「資産を担保とする資金調達」は厳密には負債ベースの資金調達ですが、便宜上資産ベースの資金調達と分類しています。

こちらで最もポピュラーなのは銀行から融資を受ける「銀行融資」がありますが、それ以外にも自社で社債を発行することもできます。

社債に関しては、ほとんどの中小企業は発行人数が50人未満の「私募債」になるかと思います。

その他、スタートアップであれば、いわゆる新株予約権付社債(Convertible Bond)をつなぎ資金として発行することもあり得るでしょう。

3.資本ベースの資金調達

資本ベースの資金調達は投資家から「出資を受けること」で資金調達を行う方法です。

この出資ですが投資契約書に定めがない限り、投資家に対する返還義務のないお金である点が銀行融資と決定的に違う方法です。

一方、会社は投資家に対して一定の株式を割り当てることになります。

株式を割り当てるということは、会社の一部を保有することとほぼ同義であり、株主総会などで経営に対して発言できる権利を持つことにつながります。

また、株主は会社の経営に口出しできる権利だけでなく、配当をもらう権利も基本的に有します。

そういった意味で「返還義務なし」というメリットの裏にはそのようなデメリットもあることを考えたうえで、資本ベースの資金調達を検討するようにしましょう。

なお、中小企業の資金調達において資本ベースの資金調達は資産・負債・その他の資金調達を実施してもなお資金が不足する場合の最終手段として取っておくことをおすすめします。

4.その他の資金調達

資産・負債・資本をベースとした資金調達以外にあたるのがこの資金調達方法です。

この分類で最もポピュラーなのが「補助金」ですね。
補助金は政府が政策目標を達成するために該当企業に補助するインセンティブのことです。

この「政策目標の達成」というのが重要で、基本的に政府の重点的な政策に沿ったもののみが補助金として登場します。

現在の一例として、以下のような補助金があります。
中小企業の販促を支援する「小規模事業者持続化補助金
IT化を推進するために「IT導入補助金
事業承継を推進するために「事業承継補助金
新商品や生産性向上を目的とした「ものづくり補助金

上記は国が補助しているものですが、地方公共団体も独自の補助金を創設しているので、本店がある自治体のホームページを調べてみると良いでしょう。

補助金は経済産業省が管轄している事業ですが、一方で厚生労働省が管轄している「助成金」というものもあります。

これは「社員を雇用している企業」を対象に助成を行うものであり、現在ですと「雇用調整助成金」が多くの企業で活用されています。

また、補助金や助成金の他に有力な資金調達方法として「クラウドファンディング」があります。

クラウドファンディングとは、御社が推進しているプロジェクトの意義やリターン(返礼品)を提示することで、不特定多数から小口の資金を調達する方法です。

クラウドファンディングは最近市民権を得てきて、様々な類型が誕生しました。

矢野経済研究所の調査によると、最も多いのが貸付型で90.2%、次に購入型5.9%、ファンド型3.0%と続きます。

つまり、クラウドファンディングといえども、類型によっては負債ベースの資金調達となったり、資本ベースの資金調達となりうるので留意が必要です。

一方、購入型のクラウドファンディングは、商品の製造費用を前もって調達できるという点で利便性が高いと言えます(リターンとして製造した商品を送ることになります)。

これらの資金調達は返済が不要であるものが多く、その点は中小企業にとって非常にありがたいと思います。

一方で、肝心の資金調達額は低めとなるケースが多いので、あくまでサブの資金調達方法と割り切って使うようにしましょう。