会計士の藤井です。

前回の記事で、保険の見える化と磨き上げのついての解説記事を書きました。

法人が加入する保険の目的として、将来の役員退職金を準備するため、というのが大きな理由です。

そこで、本日は事業承継にまつわる役員退職金の論点をいくつか紹介し、御社がどのような準備をすればよいか解説します。

役員退職金をいくら支給するかまだ決めていない
役員退職金の税金がいくらになるか分からない

本日はこのような疑問にお答えします。

役員退職金規程の整備が第一

保険にも入って、役員退職金の支払いは万全、という方が見落としやすいのが規程類です。

役員退職金規程がないと支払えないわけではありませんが、役員退職金の支給額の根拠となるものが役員退職金規程であり、税務上もその規程を一つの尺度とすることが多いです。

というのも、役員退職金として法人税法上費用にできる金額はある程度の範囲にとどまっており、不相当に高額な金額は否認されてしまいます。

基本的に損金算入できる金額は「直近の役員報酬月額×在任年数×功労倍率」で計算されます。

例えば、直近の役員報酬が月100万、在任20年、功労倍率2とすれば役員退職金は4,000万円が目安となります。

直近だけ役員報酬を上げたり、功労倍率を3以上で計算すると否認されるリスクが上がりますので要注意です。

役員退職金は税金が優遇されている

役員退職金が実際に支給されたとして、個人所得税の金額はどのように計算されるでしょうか。

こちらに関しては普段の給与所得と比較して3段階で優遇されています。

まず、退職所得を計算するにあたって、給与所得よりもとれる控除の額が大きくなることが多いです。

勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(1年未満切り上げ)
勤続年数20年超:70万円×(勤続年数(1年未満切り上げ)-20年)+800万円

国税庁HP No.1420

控除額はこのように計算します。
勤続年数15年であれば600万円、25年であれば1,150万円ですね。

次に退職所得は「退職金-控除額*1/2」と、控除額を引いた額からさらに50%減することができます。

こちらは給与所得と計算してもかなり有利になっております。

さらに、退職所得は分離課税といって、他の所得とは別に所得税を計算することになります。

これは、給与所得や事業所得など他の所得がある場合には累進超過課税で税率がどんどん高くなっていくので、有利になることが多いです。

一例として、事業所得が1,000万円あり、退職所得が150万になった場合で考えてみます。

この場合、事業所得の部分には33%の所得税率となり税額は176万円ほどですが、退職所得の税率は5%で税額は7万5,000円ですみます。

このように退職所得は給与や事業所得と比較してかなり税額的に有利なので、退職金規程を整備するとともに、実態上も役員から退職して、退職金をもらうようにしましょう。