財務戦略会計士の藤井です。

都心のベンチャー企業だと不動産を保有していることはあまりないですが、地方企業や社歴の長い企業だと不動産を保有しているケースが多いです。

そして、このような企業においては不動産を有効活用して億単位の資金調達を行うことが可能です。

そこで、本日は不動産担保融資の注意点とその活用方法について思うところを書いていきます。

不動産を使って融資額を伸ばしたい
不動産を担保に供して融資条件を改善したい

本日はこのような疑問にお答えします。

不動産担保融資のメリット

不動産を担保に供することで、融資条件が良くなることが期待されます。

まずもって分かりやすいのが、融資額が伸びるということです。

銀行側としても、不動産という保全資産があるので、ある程度リスクを取って融資を貸し出すことができるようになるためです。

また、関連して、融資額以外の融資条件も改善されることが多いです。

例えば、利率が下がるというのがあります
日本政策金融公庫の金利情報によれば、無担保の基準利率が2.06-2.55%であるのに対して、担保を提供すると1.11-2.20%まで下がります。

つまり、担保を提供する分だけ回収リスクが下がるので、下限金利が約1%も違ってくるのです。

公庫は全金融機関の中では利率が高めですが、民間金融機関だと不動産担保融資の利率は0%台になることもしばしばです。

担保を供すれば利息費用が軽減できるということも頭に入れておきましょう。

不動産担保融資の注意点

ここまで不動産担保融資のメリットなるものを解説してきましたが、この融資には注意点もあります。

不動産担保はあくまでサブ

不動産担保融資の一番の注意点として「不動産を担保に供したからといって、必ずしも融資が受けれるわけではない」という点です。

この点を誤解している中小企業の社長もたくさんいらっしゃいますが、不動産担保はあくまでサブです。

事業融資である以上、銀行が見ているのは本業の収益性です。

つまり、融資を出すことによって会社がどれほど事業を伸ばして返済原資を作れるかどうかが最重要課題であって、不動産はあくまで一つの資産保全措置でしかありません。

もっと言うと、万が一返せなかった時には銀行は担保不動産を競売にかけることになりますが、その競売時の価格は時価よりも非常に低いケースが多いです。

ここまで言えば、銀行の本音はもうお分かりでしょう。

不動産があるからといって安心せず、ちゃんと返済ができることが見えるような事業計画を作成することが肝要です。

銀行によってかなり結果が異なる

もう一つの注意点としては、銀行によって不動産に対する見方が異なるという点です。

これは、不動産自体の時価が見えにくいことに起因しているからですね。

株式など市場価格がはっきりしていて、売却時の流動性が確保されているものであれば、銀行によって評価が異なるという事態は考えにくいです。

一方で、不動産の場合は個別性が強いので、なかなか画一した時価を算出することが難しいです。

また、株式と違って不動産は情報の非対称性もかなりあるため、情報を得にくい銀行はどうしても評価が低くなる傾向にあります。

例えば、とある地方の不動産を担保設定するにあたって、その地方に根差している銀行と都内の銀行だと、不動産に対する情報量に差があるのでどうしても当該地方銀行の評価が高くなりがちです。

今の時代はどこの銀行も不動産鑑定士の鑑定を取得しているとは思いますが、最終的には不動産やその土地に対する情報量の差が担保評価に直結します。

そのため、不動産担保融資においては打診する銀行選びが重要となってくるのです。

不動産担保融資で億単位の融資を受ける

それでは、不動産担保融資で億単位の融資を受けるにはどうすればよいでしょうか。

結論から言うと「少なくとも億単位の担保評価がある不動産を保有している」か「年商が少なくとも億以上で事業的に返済の見込みがあること」が重要です。

前者は不動産の担保力に依拠した考え方ですが、前述したとおり、そもそもの事業が振るわないのであれば、銀行側も普通に融資を否決しますので注意が必要です。

また、後者では不動産担保を信用力の補填として使うことができます。

例えば、無担保なら8,000万円くらい出せる、という銀行判断があったときに、不動産を一部担保に供することで億越えの融資を引き出すことができるのです。

このように、不動産を担保に供すれば融資額は伸びる傾向にありますが、不動産だけだと融資を引き出すのは難しいので、本業の磨き上げが必要になってきます。