会計士の藤井です。

前回の記事でお伝えした通り、事業承継の磨き上げの中で財務関連は大きな比重を占めますが、今回は税務の磨き上げについて解説します。

会計を含む財務の磨き上げは売却価格にダイレクトに関連してくる項目でしたが、税務はどちらかというと事業承継後のリスクを事前に回避する意味合いがあります。

せっかくM&Aでまとまった資金を手にしても、後々の税務調査で追徴課税を取られては元も子もありませんので、税務の磨き上げは確実に行っておくべきです。

会計記帳がずさんで税務上どうなるか今から怖い
事業承継ができてとしても後々税務調査に引っ掛かりたくない

本日はこのような疑問にお答えします。

申告書の控えは保管してますか?

中小企業は上場企業のように外部からの会計監査を受けることがないで、決算書の正確性についての裏付けは任意監査を受ける場合を除いてありません。

そこで、中小企業においては税務申告書が決算書の裏付け資料として用いられることが多いです。

この税務申告書には決算書を添付する必要があり、基本的に税理士の作成と押印の元に税務当局に提出しているので、ある程度の信頼性が担保されているからです。

税務関連の申告書には主に法人税申告書と消費税申告書がありますが、これらは事業承継やM&Aの準備段階で必ず必要になってくるので、必ず保管していつでも提出できるようにしておきましょう。

なお、上記の申告書には税務署の受付印あるいは電子申告の受付通知があることが前提となります。

税務リスクを事前に回避しておく

事業承継の準備においては、適切な会計処理にしておくことも税務リスクを低減する上で重要となります。

税務リスクといっても様々ですが、大きく分けると1)会計処理の誤りによる税務リスクと2)税務当局との見解の相違による税務リスクの2つがあります。

会計処理の誤り

そもそも会計処理が誤っていることによる税務リスクです。

この誤っているというのは、本来計上すべきだった売上を計上しないとか、架空の費用を計上するなどして故意に納税金額を下げようとする行為です。

このような行為はM&Aのデューデリジェンスで発覚することもあり、売却価格に悪い影響を与えかねません。

税務当局との見解の相違

会計上は適切に計上しているものの、税務上否認されるリスクのある取引をいいます。

社長個人の支出を経費として計上するなどの処理が一般的です。

こちらに関しては税法の解釈の余地があるので、必ずしも会社側が間違っているというわけではありません。

しかし、税務当局が納得しない場合は否認されて、重加算税や延滞税が重くのしかかることもあり、突発的な支出を強いられることになります。

そのため、普段より解釈の余地のある取引を行わないか、あるいは微妙な取引は必ず事業との関連性を説明できるようにしておきましょう。

経営者の公私混同は税務当局も厳しく突っ込んでくるので、後々の税務リスクのことを考えればある程度保守的な税務処理をしておくことが望ましいです。