会計士の藤井です。

前回の記事において、事業承継には磨き上げのプロセスが必要であるとお話しました。

おさらいすると、磨き上げを行うことでより高い企業価値(売却価格)で引継ぎやM&Aができるだけでなく、会社や事業をより筋肉質にすることができるということでしたね。

会社の置かれている状況によって、これら全ての磨き上げは必要ないかもしれませんが、それでも事業承継においてはこれだけの整備を一気に完了することが望ましいです。

そこで本日は私が会計士というのもあるので「財務の磨き上げ」をどのようにして行うべきかについて解説していきます。

事業承継をしたいけど会計がどんぶり勘定となっている
決算書の内容がいまいちよく分かっていない

このような課題をお持ちの方の疑問にお答えします。

財務は事業承継の最初から最後まで重要

会計を中心とした財務は事業承継の最初から最後まで対策の重要な位置を占めます。

というのも、事業承継のスタートにおいては現状において会社にどの程度の資産・負債があり、どの程度利益が出ているかが出発点になるためです。

そして、M&Aでの売却価格は利益額や純資産額を参考として決定されることが多いため、事業承継の出口においても財務は非常に重要となります。

また、中小企業の殆どは銀行からの借入によって資金調達を行っていますが、基本的に大半の借入は経営者の個人保証が付いており、これらは事業承継でも基本的に後継者に承継されることになります。

そのため、事業承継の中で経営者保証をいかに外していくか、既存の借入の条件をどのくらい改善していくかが常に論点になってきます。

財務の磨き上げで注意すべき点

財務の磨き上げで留意すべき点は主に3つあります。

1)会計帳簿と決算書は正しく作成されているか

まず第一に会計帳簿と決算書が正しく作成されているか、が重要です。

会計帳簿は経営数値の全ての基礎になるものであり、これが間違っていると決算書なども全て間違ってしまうため、再確認が必要です。

また、正しく作成されているのみならず、必要な帳簿類が適時適切に開示できることも重要です。

特にM&Aという話になった時に買い手から財務デューデリジェンス(買収監査)を受けることがありますが、この時に帳簿を開示することになります。

その際にいいかげんな会計記帳をしていれば、買収時のリスクとして認識され、場合によっては売却額が下がってしまうことになりかねません。

2)貸借対照表はきれいになっているか

次に必要な財務の磨き上げとして貸借対照表(B/S)の整理が挙げられます。

貸借対照表には資産の部と負債の部(その結果としての純資産の部)がありますが、資産は現預金などの流動資産をできるだけ多く、負債は返済までの期間が長い固定負債をできるだけ多くし、不良在庫はなるべく清算してしまいましょう。

また、個別の勘定科目の中では、社長が会社から借り入れた役員貸付金(資産)。社長自身が会社に貸し付けた役員借入金(負債)に要注意です。

このうち役員借入金は相続財産に含まれるため、相続人にも相続権が生じることになります。残された相続人としては扱いにくい科目なので、社長から見た債権放棄やデットエクイティスワップ(DES)などを行ってきれいにしておきましょう。

3)金融機関からの借入金は融資条件を含めて一覧化されているか

貸借対照表の整理と関連して、既存の借入についても借り入れ条件を一覧にしておくことをおすすめします。

こちらは前述のとおり、経営者保証の付いた借入は事業承継後の後継者に移管されることになるため、現在の借入の全体像を把握しておくことが後々役に立ちます。

もっといえば、事業承継の準備中に既存の借入先の銀行と交渉して、経営者保証を外してもらうようにすると事業承継がスムーズに進みます。