会計士の藤井です。

ウィズコロナ経済に突入して早くも1年が過ぎました。

今日ブログを書いている2021年4月末現在において、新型コロナウイルスの感染者数は世界で1.5億人に上っているようです。

これだけ多くの人が感染すれば、必然的に変異も起きやすく、今後も変異株が世界を揺るがすことで終息までに時間がかかりそうな予感がします。

中小企業経営者としてもウィズコロナ経済が長引くことを念頭に経営をしなければならない今日この頃ですが、ことお金のことを考えた時にどのようにお金を使っていけば良いでしょうか。

本日は、社長のお金の使い所について思うところを書いていきます。

投資をすべきかどうかの基準がわからない
利益が出たので節税しようか迷っている

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

そもそも投資ができていますか?

お金の使い方(投資)の話をしていく前に、そもそも投資をしていますか?という問題提起をしたいと思います。

中小企業経営者の投資意思決定の中には、将来への投資に見えるようで実は投資になっていないものも散見されます。

例えば、無駄に豪華な高級車を購入するとか、いき過ぎた接待交際費であるとか、あるいは過剰に豪華な自社ビルの建設などが該当します。

確かに、高級車を買うことで経営者のモチベーションが上がるとか、接待交際費を使うことで顧客と仲良くなれるとか、自社ビル建設によって社員の士気が上がるとか、一定の効果があることは否定しません。

ただ、そこに「費用対効果(ROI)」という発想はありますでしょうか。

個人におけるお金の使い方は人それぞれで良いと思いますし、人生を豊かにすることにどんどんお金を使うべきとも言えます。

しかし、法人においては「利潤の追求」が存在意義の一つであるはずです。

であるならば、なおのこと法人においては「浪費」や「消費」ではなく「投資」をしなければならないのは言うまでもありません。

特に現在のコロナ禍においては、資金繰りが厳しくなりやすい時期です。

思い切って攻めることは大事ですが「最小の投資で最大の成果を生み出す方法」を考えましょう。

投資のリターンを見極めよ

社長にとって最も大事な仕事の一つが「投資意思決定」です。

すなわち、利益で残ったお金や外部から集めてきたお金を「どこ」に「どれだけ」使うのか。

このお金の使い方にこそ経営者の力量が現れます。

イケてる経営者は何がすごいかというと、この投資意思決定が抜群にうまい。

言い換えると、投資のROI(Return On Investment)が人並み以上に高いということです。

ここで言うリターンとは最終的には業績がどれだけアップしたかで測られます。

その投資によってどれだけ利益が上がるのか、ということを真剣に考えていく必要があります。

一方、ダメな社長は一言で言うと「何も考えずに投資」している傾向にあります。

投資のリターンを考えずに、とにかく良さそうだからという理由でお金を使ってしまう。

いいですか、この投資リターンという概念に「金額の高低はない」のですよ。

1億円の設備投資であろうが、100円の事務用具であろうが、基本的に考えは同じです。

出したお金から得られるリターンはどれだけあるだろうか?

経営者ならば、投資に対して人並み以上に敏感になるべきです。

人への投資はリターンが高い

では、具体的に中小企業の経営者はどのようにお金を使うべきか?

ここに関しては企業ごとに課題が異なるので、画一の答えはありません。

ただ、一つあるとすれば「人に対する投資」はリターンが高めに出ると思います。

人というのは例えば「社内の人材育成」が挙げられます。

特に中小企業は大企業みたいに有能な人材がなかなか来ないですし、そもそも現代の日本では人手不足が社会的な課題にもなっています。

だとすれば、そこそこの能力の社員を自社で育てて即戦力にするか、あるいは社員が働きやすい環境を整えて、社員に長く働いてもらうことが一つの解決策になります。

IT化が進んだ現代にあって、ロボットが人を代替できると盛んに言われています。

ただ、2021年の現在を見渡すと、依然としてロボットを動かすのも人、オペレーションを組み立てるのも人ではないですか。

結局のところ、優れた人材があって会社というものは上手く回っていくものですし、何より社長がどれだけ優秀でも1人では絶対に良いビジネスができません。

そういった意味で、人への投資はある程度の規模の企業なら優先的に検討すべき投資意思決定であると考えます。

番外編:過度な節税は禁物

ここまで経営者の正しいお金の使い方について語ってきましたが、よく相談を受ける事として「節税はすべきですか?」というものがあります。

その答えとしては「前向きに節税しましょう」といつも伝えています。

前向きに節税ってなんやねん、と思う方もいらっしゃると思いますが、要するに「先行投資」して節税しましょうという事です。

例えば、ある程度の利益が出ているのであれば、人材育成するとか、人材を雇用するとか、あるいは広告宣伝費を多めにかけて新規顧客を開拓するのも良いでしょう。

節税のために経費を増やすというのも悪くはないですが、前述した投資リターンを厳格に判定して経費を増やすようにしてください。

一方で、自分の私腹を肥やすのはあまりお勧めできません。これらは投資ではなく「消費」もっと言うと「浪費」の可能性があります。

経営状況が芳しくない時に適切な投資ができないと会社は沈んでしまいます。

最後に、節税したから支出が減ると勘違いされている経営者の方がいますが、例えば節税するために100接待交際費に使ったとしましょう。

確かに利益が出ていれば大まかに30くらいは税金が少なくなるのですが、もともと100支出しているので結果として「資金繰り的には70のマイナス」になってしまいます。

コロナ禍においては、取引先の突然の倒産などにより、突如として資金繰りが逼迫することが多発しています。

このような時期に儲かっていることは素晴らしいですが、見えない将来のために現預金を厚めに持っておいたほうが良いでしょう。

節税はほどほどに、資金繰りのことを第一に考えて実行に移しましょう。