会計士の藤井です。

前回の記事において、高く売れる会社の特徴についてお話しました。

「最高値で売れる会社」と「売れやすい会社」は共通点も多い一方で、少し違うところもあると思います。

そこで、当記事では「売れやすい会社」の特徴をざっと俯瞰して、解説してみようと思います。

買い手から需要のある会社がどんな会社か知りたい
引き継いでもらえる会社になるべく準備を進めている

本日はこのような疑問にお答えします。

高く売れる会社と売れやすい会社の共通点

高く売れる会社と売れやすい会社にはいくつかの共通点があります。

  • 最近会社が急成長している
  • ストックビジネスで安定的な売上を上げている
  • 独自のノウハウを持っている
  • 熟練の従業員達がいる

何に着目するかは買い手次第なところがありますので、一概にこのような会社が良い、と言うのは難しいところがあります。

一方で、業績が良くて独自のノウハウを持っている会社は売れやすいし高く売れることが望めると思います。

定量的に売れやすい会社

上記の高く売れるほどではないけど、比較的売れやすい会社の特徴もいくつかあるので定量的・定性的な観点から紹介させていただきます。

定量的なところでいうと「2期連続赤字ではいこと」「借入の金額が年商を超えていない事」「重要な簿外負債がないこと」が挙げられます。

まず収益性に関してですが、直近の決算が2期連続赤字であると、会社の儲ける力に疑問符がつくことになります。

特に万年赤字の会社は利益が出ない体質となっていることが多く、買い手が引き継いだとしても、赤字を補填するために何らかの資金手当てをしていく必要があるので、どうしても売れにくくなってしまいます。

また、会社の資産性という観点からすれば、できるだけ買い手は負債を引き継ぎたくないのが本音ではあります。

ここで、借入が年商を超えていると、債務返済能力から疑問符がつきます。年商以上のお金は入ってこないので、買い手としても心配になるところです。

同様に、多額の簿外負債があると、買い手としても難色を示すのは想像に難くないでしょう。

ここでいう簿外負債としては以下のようなものがあります。

  • 買掛金や未払金の計上漏れ
  • 未払い残業代
  • 社会保険等の未払い
  • 連帯保証人になったことによる偶発債務
  • 損害賠償訴訟による債務

これらが簿外負債として認識されると、買い手からの評価額が下がるか、場合によってはM&A自体が破談になるリスクも秘めています。

まとめると、定量的に売れやすい会社とは、裏を返せば「売れにくい会社の要件」をちゃんと対処している会社とも言うことができます。

定性的に売れやすい会社

一方、定性的な観点からは「多数のお客様に支えられている」「何か一点に秀でている」「業界再編が起きている業界に属している」ことが挙げられます。

まず「多数のお客様の支えられているというのは」安定的な売上を上げれている会社とかなり似たところがあります。

両者は売上が安定している、という点で同じだからです。

顧客数が多いということは、どれか一社の大口顧客に依存していないという意味で、売上の安定をもたらしますし、買い手も安心して引き継げることでしょう。

「何か一点に秀でている」というのも、独自のノウハウを持っている、という高値で売れる会社の特徴に近しいものがあります。

これに関しては独自のノウハウではなくとも、何か一つのビジネスに絞り込んで事業を展開しているほうが、買い手としては魅力が増します。

例えば「どんな機械の修理もすることができます」ではなく「わが社はフォークリフトの修理に特化していて、修理技術は他社に負けません」の方が魅力的です。

一方で、特段の強みがなかったとしても、業界再編の波が来て、サクっと引継ぎ先が見つかるということもあります。

例えばですが「調剤薬局」「物流」「設備工事」「食品」などは近年業界再編の流れが激しく、このような業界に属していると売れやすいという傾向にはあります。

すぐに業界を変えるのは難しいという側面がありますが、該当の業界の属している会社様は業界再編に関する最新情報を入手しておくことをおすすめします。