会計士の藤井です。

中小企業における資金調達の方法で最も基本となるのは銀行融資です。

銀行融資は各種の審査を経るため、申し込んだからといってすぐに資金が入金されるわけではありません。

例えば、民間金融機関による初回の融資だと「信用保証協会」の審査が必要なので、申し込みから着金まで2ヶ月以上かかることもままあります。

融資審査を受けている間に資金がショートしてしまうケースも少なくありません。

そこで、本日は資金繰りを円滑にするために「融資を検討するタイミング」についていくつか思うところを書いていこうと思います。

すでに資金ショートすれすれの状況である
いつ融資を受けるべきか迷うときがある

本日はこのような疑問にお答えします。

融資はお金が少なくなってからでは遅い

弊社への相談の中で、資金ショート寸前になって問い合わせをいただくケースが結構多いのですが、融資を検討するタイミングとしてはすでに遅いと言わざるを得ません。

第一に、前述したとおり融資を申し込んだからといってすぐに資金が出てこないためです(最短即日融資のノンバンク融資は利息が圧倒的に高いです)。

さらに、資金量が少ないということは銀行との交渉上不利になります。借りないと事業継続できないのでは、銀行から足元を見られるからですね。

ということで、融資を検討するベストなタイミングとしては、将来の資金繰り需要を分析した上で「この先ちょっと資金繰り苦しくなるかも」というタイミングです。

この「ちょっと資金繰りきつくなりそう」という感覚が大事で、お金なくなってから融資に駆け込むのとは雲泥の差があります。

「まだ現預金に余裕はあるけど、資金繰りの悪化が予想される場合」に銀行に相談だけしておくイメージです。

なお、利息費用をケチって融資を受けない人もいますが、利息はケチらないことをお勧めします。

というのも「利息はいつでも銀行からお金を調達するための必要資金」と割り切るのがよいためです。

今は所謂コロナ融資もあって利息が最低0%と非常に低い時代ですし、そうでなかったとしても返済実績を重ねていけば自然と利率は下がっていく傾向にあるので、過剰な心配は不要です。

月商1-3か月の攻防

では、早めに融資を受けるべきことが分かった上で、具体的にいつ融資の相談に行けばよいでしょうか?

これに関しては事業内容や業種に依存するところなので、確固たる正解はありません。

しかし、私からは3つの基準を提示しておきたいと思います。それが以下となります。

「月商3か月分を下回ったらすぐに融資の検討と書類の準備」
「月商2か月程度まで落ち込みそうならすぐに融資の申し込み」
「月商1か月を切ったらすぐに融資以外の資金調達策の実行」

まず、月商の3か月分の現預金が一応の目安となりますが、これを下回ってくると資金繰り的に不安となりますので、融資の検討と準備を行うことをお勧めします。

そして、最低でも月商の2から3か月分の現預金があるうちに融資を申し込んでしまいます。

というのも、融資をの申し込みから着金まで遅いと2か月以上かかることがありますし、そもそも融資が確実に受けられるという保証はないからです。

一方、現預金が月商の1か月程度まで落ち込んでしまった場合、資金繰り的には赤信号です。

ここまで来てしまうと資金繰りがショートして立ち行かなる可能性が高いので、融資以外の全ての資金調達策を検討して実行していく必要があります。

ただ、この基準はあくまで一つの考え方であって、実際の事業内容によって変わってくるところもあります。

むしろ、現預金が豊富にあるときに借りておいた方が銀行としても安心して貸せるというのがあるので、早めに融資を申し込むほうがメリットが大きいです。

成長しているときほどお金を借りろ

以上の話は基本的に売上が下がってきて資金繰りが厳しくなってきた企業向けの基準ですが、成長企業も融資とは無縁ではいられません。

というのも「成長している時ほどお金がなくなる」ので融資というツールを使うべきだからです。

よく勘違いするところですが、売上の増加に比例して収入が増えると思ったら大間違いです。

なぜかというと、成長の過程でどんどん売掛金は増えていきますが、どんな企業でも一定程度は回収不能な売掛金がでてくるため、「売上」が「収入」につながらないことが起きうるからですね。

また「売る」ためには「仕入」が必要です。
これは仕入が必要ない会社であっても、プロダクトを作るには最低限人件費がかかりますので、やはり広義の仕入が先行します。

この点、成長している企業は売上を伸ばすための仕入がそうでない企業と比べて高まりますので、常に資金不足に悩まされることになるのです。

ということで、ビジネスが軌道に乗って売上が急成長し始める頃には、自分の会社に合った銀行を開拓し始めるとよいでしょう。

銀行側としても潰れそうな企業より成長している企業にお金を貸したいのが本音なので、売上が伸びていれば良い対応をしてくれることでしょう。