会計士の藤井です。

過去の中小企業の事業承継といえば、息子などの親族による内部承継が中心でした。

しかし、時代の流れとともに、家業を継ぐ人も徐々に少なくなり、親族以外の従業員や外部の第三者が事業を承継する流れが加速しています。

そして、今年2020年は新型コロナウイルスの影響をもろに受ける中小企業が多いことでしょう。

そこで、今後の事業承継はどうなっていくのか、あるいはどうしていけばいいのかについて事業承継を支援している会計士の視点で私見をお届けします。

これから事業承継を検討している
まだ事業承継に向けて踏ん切りがつかない

本日はこのような疑問にお答えします。

再生型事業承継が増加する見込み

まず今年来年あたりはコロナの影響により、事業価値が毀損してしまう中小企業が多いことから、再生型の事業承継が増加するでしょう。

再生型の事業承継とは、自主再建が難しい場合に倒産も念頭において進める事業承継やM&Aのことを言います。

倒産が回避できた場合は、従業員の雇用が守れたり、取引先との取引を維持できることが大きなメリットとなるでしょう。

一方で、再生型の事業承継を遂行するためには、財務体質の改善が必須となります。

具体的には、不要な資産の処分や金融機関との交渉による債務の圧縮がテーマになります。

また、コロナ禍で現預金残高も相当減っていることが想定されるので、大胆なコストカットを行って止血をし、キャッシュフローを改善することも重要になってきます。

これらを行った上で、それでも不採算事業の改善が見られない場合、会社分割による不採算事業の切り離しなどを行う場合もあります。

いずれにせよ、会社内に大胆なメスを入れることになるので、できればここまで傷口を広げる前に通常の事業承継やM&Aで承継を図ることが本則となります。

アフターコロナは勝ち組と負け組に

コロナ後においては、勝ち組と負け組に明確に分かれるのではないかと思っています。

コロナによってビジネスのルールが根本から変わってしまった業界もあると思いますし、需要が他業界にシフトして、需要自体が戻らない業界もあると考えられます。

そのようなビジネス環境において本当の意味で生き残るためには基本的に2つしかありません。

一つが「ベンチャー型の事業承継」です。
ベンチャー型事業承継とは、若い後継者が自社の強みや経営資源を活かして、今のニーズに合った全く新しい事業を始めるタイプの事業承継です。

数十年生き残っている中小企業には他にはない強みが眠っており、その力を次の世代が掘り起こしてビジネスにつなげていく、という考え方です。

こちらは、実質的には第二の創業ともいうべきで、若く起業家マインドをもった後継者がいればハマる可能性があります。

もう一つが「グループ会社の傘下に入る」です。
特に斜陽産業においては今後も需要が先細っていく可能性が高く、先のベンチャー型事業承継のように新しいイノベーションを目指さない場合は単純に規模での戦いとなります。

規模での戦いとなった場合、最も有効なのがより大きな同業他社のグループ入りをして、より大きな経営資源のもとに生き残りを図ることになります。

このような視点は、次のコロナ(自然災害)が来たときに耐えうる力を持つという意味でも重要です。

リーマンショックやコロナなど、大きな経済ショックが10年に一度訪れている現代ですから、そこへの備えがない中小企業はあっという間に廃業に立たされてしまうことも珍しくありません。

そういった意味でも、グループ会社の傘下に入るやり方は、今後の事業承継において一つの柱になるのではないかと考えております。