会計士の藤井です。

銀行融資(デットファイナンス)以外の資金調達手法としてはファクタリングなどのアセットファイナンスや投資家から出資を受けるエクイティファイナンスがあります。

本日は機械などの固定資産をリース会社に売却して、リース会社から当該資産をリースする「セールアンドリースバック」を紹介します。

セールアンドリースバックは、製造業など固定資産が膨らみやすい企業にとって適していると言われますが、どのように使っていくべきでしょうか。

これ以上銀行借入を増加させたくない
数年前に高額の設備投資を行って資金繰りが悪化している

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

セールアンドリースバックの仕組み

セールアンドリースバックを一言で言うと「資産を売却した後、リースとして引き続き借り続ける」ことを言います。

保有資産をリース(レンタル)に切り替える時に使われる手法ですが「売却」というプロセスを経ているので、事業資金の調達として使われることもあります。

短期間で現金化が可能

セールアンドリースバックの1番の利点は短期間で現金化できることでしょう。

資金繰りに困っている時、最初に思い浮かぶのは「銀行融資」であることが多いはずです。

しかし、銀行融資には実際は融資枠というものがありますし、審査の関係上必ず銀行がお金を貸してくれるとは限りません。

その点、セールアンドリースバックであれば、銀行融資を頼らずに即時現金化することが可能です。

また、銀行融資の比率が多い場合は、セールアンドリースバックを利用して得た資金を返済に充てることもできます。

資産を使い続けられる

次の利点として、引き続き売却資産を使い続けることができることです。

というのも、通常の売却だと所有権は売却先に移転してしまいますので、一旦売却してしまうと使うことができなくなってしまいます。

遊休資産であれば売却でも全然問題ないのですが、例えば現在も製造するのに使っている機械などは使えなくなると困ります。

この点、セールアンドリースバックであれば、リース会社から売却資産をリースすることで、引き続き資産を使い続けることができるのでオペレーション上も問題になることはありません。

リースに出した資産は再購入できる

一旦セールアンドリースバックで売りに出した資産は買い戻すことも可能です。

こちらも譲渡との比較をすると、一旦資産を売却すると所有権が移転するので、買い戻しは困難であることが多いでしょう。

しかし、セールアンドリースバックは売却した資産を買い戻すことが前提になっていることもあります。

また、リース会社によっては資産買い戻しの計画まで提示してくれるところもあるので、そういった意味では再購入のハードルは低いです。

こういった柔軟な運用もセールアンドリースバックのメリットです。

資金繰りが悪い時にセールアンドリースバックを使って、資金繰りが回復してくれば、資産を再購入すれば元の権利関係に戻ります。

セールアンドリースバックの使い方

セールアンドリースバックの特徴を抑えた上で、この取引をどう活用していくかについて考察していきます。

まず、大前提として、自社で機械や不動産などセールアンドリースバック対象資産を保有していなければなりません。

そのため、固定資産が薄いサービス業などはそもそもセールアンドリースバックの検討対象外になることが多いです。

また、銀行融資を十分に受けれるだけの信用や融資枠があり、借り入れもそこまで多くなければ、セールアンドリースバックはあまり検討する余地がないかもしれません。

後述しますが、セールアンドリースバックは売却価格やリース料を考慮した時に銀行融資ほど手数料が安くないからです。

そういった意味で、セールアンドリースバックを検討すべき企業は以下のようになります。

  • 製造業など多額の固定資産を抱えている
  • 最近借り入れ残高が多めとなっている
  • これ以上銀行から融資を受けられない
  • 短期に劇的に資金繰りを改善したい

セールアンドリースバックの注意点

このように資産保有をリースに切り替えることによって、短期間に多額の資金調達ができるセールアンドリースバックですが、利用にあたっては注意点がいくつかあります。

割安価格で資産を売却する可能性

まず最初に、資産の売却価格がその時点での時価や帳簿価額を割り込む恐れがあると言うことです。

このセールアンドリースバックはリース会社との相対取引になります。

そのため、場合によってはリース会社に足元を見られるといいますか、良くない条件で保有資産の売却を行わなければならない可能性を孕んでいます。

その場合、本来であれば普通に譲渡していれば売却価格がもっと上がった、というようなケースも出てくるでしょう。

リース料にはリース会社の利益が付加

また、こちらは当たり前の話ですが、リースバックした時のリース料が高くつく可能性もあります。

普通のリース取引よりも、リース会社側がリスクを負っている形になるので、どうしてもリース料が割高になる傾向にあります。

ファクタリングの記事でもお話しましたが、資金調達までの期間が短ければ短いほど資金調達のコストがかかることになります。

そういった意味で、セールアンドリースバック以外の資金調達手段を勘案し、資金調達までの日数、手数料や利率などを比較した上で、選択するのが良いと思います。