会計士の藤井です。
後継者不足により社会問題となっている事業承継問題ですが、コロナの影響もあって密かに廃業する会社が急増しています。
そのように廃業する会社の中には、本来であれば廃業しなくても引き継ぎ先が見つかるケースも多々あります。
そこで、当記事では、廃業する前にもう一度承継を考えるべき理由と具体的なケースについて思うところを書いていきます。
自分の事業の廃業をなんとしても回避したい
債務超過だけど事業承継したい
本日はこのような疑問にお答えしていきます。
廃業する前に今一度考える
帝国データバンクのプレスによれば、2020年1-11月までに51,754件の廃業が発生しているとのことです。
いわゆるコロナ融資によって生き永らえた企業もたくさんあった中でも、これだけの企業が廃業しているという現状があります。
この5万件を超える廃業の中には、誰にも相談する相手がいない中ひっそりと廃業したというケースが沢山あると聞き及んでいます。
しかし、その廃業は本当にしなければならないものだったのでしょうか?廃業の他に、他社に承継するなどの策があったのではないでしょうか?
難があっても承継できる
全ての中小企業が完璧な訳ではありません。
経営状態のどこかに難を抱えている場合もあるでしょう。
しかし、事業承継の現場を見てみると、例えば大きな難がありように見えても実際に引き継ぎができている会社は沢山あります。
下記でいくつか事例を紹介したいと思います。
独自の強みがなくても承継できる
まず、事業承継するためには「独自の強み」がないと引き継いでもらえないという思い込みをされている経営者がいらっしゃいます。
「うちには尖った技術があるわけではない」
「うちには競合他社と差別化要素はない」
「うちは大手の有名企業と取引しているわけではない」
こんな声が聞こえてきそうですが、世の大半の中小企業がそのような状況であることは事実なので、スタートとしては問題になりません。
むしろ、ここで一つ考えるべきなのは「独自の強みがないと思っている一方で、なぜ今まで御社が存続してきたのか」です。
数年で大半の企業が廃業すると言われている中、御社は長年に渡って経営を続けてこられた実績があります。
そして、その長年に渡る経営の裏には必ず理由があり、その理由を深掘りしていくことで事業を引き継げる可能性が見えてきます。
例えば「競合と差別化要素がない」というものを例に取りましょう。
差別化要素がなくても「業務をちゃんとノウハウ化」していれば、承継後も安定して業務を回して稼げるとの見込みから買い手が好意的に評価する場合があります。
逆にいうと、差別化要素があったとしても、業務が社長に依存しているなど属人性がありすぎる場合には引き継ぎができないケースが多いです。
そういった意味で、独自の強みがなく、他社と同じような事業をやっていても、事業承継では卑下する必要は全くないのです。
また、このようなケースにおいては、他地域の同業他社が営業エリアを広げるために買収するというケースもよく見かけます。
債務超過でも承継できる
債務超過であったとしても、利益が出ていれば引き継ぎができる可能性があります。
というのも、債務超過は過去に手痛い失敗をしただけの可能性があり、今の会社の経営状態を必ずしも正しく示していないからです。
債務超過になる原因は様々で、万年赤字が積み重なって純資産が毀損し、最終的に債務超過に陥ったケースもあるでしょう。
また、過去に投資で大きな失敗をして、資産が負債を下回ってしまうことにより債務超過になるケースもあります。
長年経営している中小企業の場合は、どちらかというと後者の方が多いのではないでしょうか。
大事なのは「今利益が出ているかどうか」です。
利益が出続ければいつかは債務超過が解消できるからですね。
逆に、前者のように万年赤字で債務超過に陥ってしまった場合は、今すぐに事業承継するのは難易度が高いでしょう。
やはり、どの買い手も赤字を垂れ流し続けている企業を欲しいとは思わないからです。
このような場合、まずは不採算事業から撤退して、止血を行うことが最優先です。
財務もスリム化して、まずは企業存続のために抜本的な改革が必要となります。
その上で、踏ん張って通期で営業黒字を出すことを心がけましょう。そうすれば、例え債務超過であったとしても、買い手は興味を示してくれることでしょう。