会計士の藤井です。

事業承継を確実に遂行するためには、経験の承継だけではなく株式の承継も必要となります。

ここで株式の承継の際に障害となってくるのが自社株の買い取り資金の捻出です。

近年は、事業承継税制など、株式の承継を円滑にするような制度が続々と作られていますが、いずれにせよいつかは自社株の承継資金が必要になります。

そこで、当記事では自社株の買い取り資金を得るために融資を受ける方法について思うところを書いていきます。

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

なぜ自社株買取資金が必要か?

そもそもなぜ自社株の買取資金が必要なのでしょうか?

事業承継に際しては、先代経営者から後継者に自社株を承継させる必要があり、その方法として贈与・相続・譲渡があります。

基本的に内部承継であれば贈与、外部承継であれば譲渡を取ることが多いですが、その際にどうしても納税資金や買取資金を用意する必要が出てくるのです。

後継者に多額の資金があれば特に問題にならないかもしれませんが、贈与税・相続税の納税や自社株買取には億単位の資金が必要な場合もあり、自己資金だけで承継するには限界があります。

そのように資金の限度によって承継が頓挫しないように、金融機関では自社株関連の融資を行っているところも少なくありません。

自社株関連の融資を受ける方法

自社株買取にかかる資金手当の必要性がわかったところで、ここからは具体的に金融機関の融資制度などをみていきたいと思います。

日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」

政府系金融機関である日本政策金融公庫は「事業承継・集約・活性化支援資金」という融資制度によって事業承継を行う中小企業を支援しています。

項目内容
融資限度額7,200万円
(運転資金4,800万円)
返済期間設備資金 20年以内
運転資金 7年以内
(据置期間 2年以内)
利率(無担保の場合)1.66〜2.55%
日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」

このうち、利率に関しては、事業承継計画を策定していたり、安定的な経営権の確保等により事業の承継・集約を行うことを計画していれば特別利率が適用されます。

また、上記は国民生活事業の場合の条件を列挙しましたが、年商が数億円を超えてくると中小企業事業の範疇となり、融資限度額が大幅に増額されます。

その場合の融資限度額は最大で7億2,000万円となり、利率も条件によっては0%台まで下がる可能性があります。

きらぼし銀行「事業承継・相続対策サポートローン」

首都圏に多くの支店を構える地銀のきらぼし銀行からも事業承継ローンが出ています。

項目内容
融資限度額1,000万円〜5億円
返済期間15年以内
(据置期間 最大5年以内)
利率所定利率
変動金利
きらぼし銀行「事業承継・相続対策サポートローン」

事業承継ローンなので、資金使途は事業承継に必要な株式取得資金・納税資金に限定されています。

なお、対象となる企業は、公益財団法人東京都中小企業振興公社において、事業承継計画の策定支援を行い、公社が作成した「提案書」および「外部専門家による意見書」を当行に開示していただける法人・個人事業主です。

このように、事業承継ローンを受けるに当たっては事前に事業承継計画を立てる必要があるので、留意が必要です。