会計士の藤井です。

財務の磨き上げにおいて、既存の借入と融資条件の一覧化することのメリットについてお伝えしました。

既存の借入があること自体は全く問題ないのですが、問題は大半の中小企業の経営者に経営者保証(個人保証)がついていることです。

今回は、事業承継において経営者保証がいかに障壁になるか、そして、その障壁を取り除いて円滑な事業承継を行う方法について解説します。

経営者保証付きの借入が多く、後継者が嫌がっている
経営者保証を外す方法について知りたい

今回はこのような疑問にお答えします。

まずは保証の見える化を

経営者保証を外す交渉に入る前に、まずは既存の借入条件を一覧にしてまとめることをおすすめします。

大半の中小企業の場合は複数の銀行から借入があると思いますので、借入額、返済期間、利率、保証の有無、担保などを一覧表にしてみましょう。

一覧にまとめるものは銀行借り入れだけでなく、リースなど取引が借入の性格を帯びるもの全てになります。

一覧にまとめることによって、あの銀行は利率が高いとか、意外と月々の返済額がかさんで資金繰りを圧迫しているなど見えてくるものがあると思います。

経営者保証ガイドラインを有効活用

そして既存の借入を一覧表にまとめたら、次は経営者保証を外すための準備に入っていきます。

ここで参照すべきなのが「経営者保証に関するガイドライン」です。

当ガイドラインには経営者が保証を外すために3つの指針があります。

1)法人と個人が明確に分離されていること
2)財務基盤が健全であること
3)経営の透明性が確保されていること

1)については、個人たる経営者と法人たる会社の間で公私混同がない、という意味となります。

具体的には、会社から経営者への貸付である「役員貸付金」がないことや過大な経費によって私腹を肥やしていないことが挙げられます。

2)の財務基盤については諸説ありますが、目安としては2期連続営業黒字となれば概ね良いとされています。

節税のために無理やり黒字を赤字にしている会社様は、これを機会に少なくても良いので営業利益を黒字にすることをおすすめします。

最後に3)の経営の透明性ですが、適時適切な会計報告ができることが大事です。

適時適切とは、具体的には「月次決算」で決算が締められるような経理体制を作ることが肝要です。

1)~3)どれも多少のハードルはありますが、事業承継のことを考えた場合、これらをクリアして銀行との交渉に臨んでおけば後が楽になります。