会計士の藤井です。

弊社では、事業承継で売却額を最大化するためのコンサルティングを行っておりますが、クライアントによっては「売却額もそうだけど譲れない条件もたくさんある」という方もいらっしゃいます。

例えば「従業員の雇用条件を守りたい」とか「技術を競合他社に流出させたくない」など、定性的な条件になります。

本日は、このような定性的な条件を事業承継で必ず実現する方法について思うところを書いていきます。

事業承継に当たって必ず譲れない条件がある
従業員の雇用はどうしても守りたい

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

事業承継の条件交渉が重要な理由

事業承継のうち外部承継の場合は、第三者が引き継ぐという形になるので、他社の傘下に入ることが多いです。

ここで、引き継ぎを行う会社側からは基本的に御社の株式を100%保有して、御社の経営権を全て掌握することになります。

そうなると、事業承継後は基本的に引き継ぎ先の企業で意思決定が行われることになり、先代経営者の想いとは反する決定がなされることも往々にしてあり得ます。

例えば、先代経営者が社員の雇用をすごく気にしていて、事業承継後も親会社に引き続き全員の雇用をして欲しいと思っているとします。

しかしながら、景気はいつも移り変わりますので、今回のコロナ騒動のように景気がガクッと落ち込んだ時はリストラも避けられないかもしれません。

また、同様に、親会社が100%の株式を持っているがゆえに、当該親会社が御社を他社に譲渡する可能性だって否定できません。

このように、事業承継をして第三者に100%の株式を渡すということは、すなわち、他社が承継後の御社を好き勝手にできるということでもあるのです。

譲れない条件を実現する方法

このように株式を保有するということは、経営権を掌握するということなので、M&Aとはつまり株を他社に売って資金を得る代わりに経営権を手放すという取引なのです。

それでは、事業承継において譲れない条件を実現するにはどうすれば良いでしょうか。

これは単純な話で、必ず「譲渡契約書」に希望条件を明記することです。

例えば、従業員の雇用を守りたいということであれば、譲渡契約書の一項目として譲渡後数年は従業員の雇用を守る旨の記述をすべきです。

買い手企業としては従業員を雇用し続けることでコスト増を甘受することになるので、このような条件は買収価格の一部を構成する重要なものになります。

そのため、売り手としても売却価格だけでなく条件をしっかりと提示して、最終的に譲渡契約書に落とし込むようにしましょう。