ベンチャー社長・2代目社長向け財務戦略会計士の藤井です。
スタートアップを除く中小企業が資金調達する現実的な手法として一番に挙げられるのは「銀行融資」です。
銀行融資は近年利率も低く、メジャーな存在である一方、銀行内の融資枠や信用保証枠の兼ね合いから無尽蔵に借りることはできません。
そこで、銀行融資の補助として使えるのが「社債」です。
今回は中小企業が社債を発行する方法及び社債の使いどころについて思うところを書いていきます。
銀行から目いっぱい借りて融資枠がない
銀行融資以外の資金調達方法を模索している
本日はこのような疑問にお答えします。
社債とは何か?
社債とは企業が資金調達を目的として発行する債券です。
いわゆる会社の借金の一種で、社債の引受先か資金調達を行う代わりに、定められた期日に元本や利息を支払う義務を負います。
社債の種類には普通社債の他に転換社債、劣後債などたくさんあるのですが、中小企業が現実的に使えるのは普通社債となります。
そして、普通社債の中でも私募債、もっというと「少人数私募債」が中小企業の実務上最も使いやすいものとなっています。
少人数私募債とは
少人数私募債とは、以下の要件を満たす私募債です。
①社債の募集人数が50人未満(最大49人)
②社債の発行総額が1億円未満
③社債総額を1口の金額で割った口数が50未満
④社債の転売制限を設定する
⑤社債の募集者から適格投資家(銀行や証券会社)を除外
つまり、会社の縁故者を中心として社債を引き受けてもらい、1億円未満の資金を調達するのが少人数私募債の特徴です。
少人数私募債の最大のメリットは「手間とコストがかからない」ことです。
というのも、公募債や銀行引受私募債は準備する資料や手数料が多いからです。
上場企業が多数活用している公募債を発行するためには、有価証券届出書の提出や目論見書の交付が必要になります。
また、銀行引受私募債は社債の発行に関する業務を銀行が一手に引き受けてくれるので、一件よさそうに見えるのですが、その裏には多くの手数料が発生し、手数料総額は数百万円に上ることもあります。
そのため、手数料を抑えたいということでしたら、自社で少人数私募債を発行することをおすすめします。
少人数私募債の使いどころ
このように、少人数私募債は数千万単位の資金調達を基本的に自社で完結させることができ、利率や償還期限を比較的自由に設定できるのですが、注意点もいくつかあります。
最も重要なのが、実際に社債を引き受ける人がいるかという話です。
銀行引受私募債の場合は、銀行の審査が通れば引き受けてくれる一方で、少人数私募債は自分たちで社債権者を探さなければなりません。
そのため、社債権者が集まらず、想定通りの資金調達ができないリスクはどうしても残ってしまいます。
また、銀行融資と違ってリスケジュールが難しいという点も場合によっては致命的です。
もちろん、納得のいく理由と新しい返済スケジュールを提示すれば、リスケは不可能ではありません。
ただ、少人数私募債の性格上、縁故者が社債権者になることがほとんどなので、今後の事業活動に悪影響を及ぼす点にも注意が必要です。