会計士の藤井です。

東京商工リサーチによると、コロナ関連倒産が1,000件を超えたということです。

倒産する理由はさまざまですが、最も一般的なのが資金がショートすることです。

資金ショートとは、平たくいうと「手持ち資金が底をつく」ことです。ただ、この資金ショートは高い確率で防ぐことができるのです。

当記事では、資金ショートの原因を探るとともに、資金ショートを回避する方法について思うところを書いていきます。

資金ショートする原因を知りたい
資金ショートを回避する方策を知りたい

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

資金ショートは資金繰り管理の失敗

資金ショートの原因は端的にいうと「資金繰り管理を失敗」してしまったことから生じます。

それでは、どのように資金繰り管理を失敗すると、資金ショートに近づいていくのでしょうか?いくつか例示してみます。

売上が減少している

資金繰り管理以前の話で、売上が減少していればいつかは資金ショートしてしまいます。

今のコロナ禍ではこのケースが1番多いと思われます。

というのも、特定の業種(飲食業など)では、外出自粛の影響から需要が蒸発し、来店するお客様の数が激減している傾向にあるからです。

ただ、そのように厳しい中でもできることはあるかもしれません。例えば、来店が難しければデリバリーにすることや、中食の通販などに取り組むこともできます。

いつの時代も変化した者が生き残るとはダーウィンの言葉ですが、今我々は未曾有の危機にあって、変化することを促されているのかもしれません。

なお、事業を大幅に転換したいときは、「事業再構築補助金」が使える場合があります。企業の規模にもよりますが、100万円から最大1億円までの補助となっています。

経費が多すぎる

次に資金ショートする原因として多いのが「過剰な経費」です。

経費とはいわゆる販管費のことで、人件費や家賃、交際費、広告宣伝費など売上を上げる上で間接的に発生する費用のことを言います。

これらの費用は「変動費」と「固定費」に分けることができます。

変動費とは需要に応じて上下する費用、固定費は必ずかかってくる費用と捉えればオッケーです。

ここでの問題は「固定費」です。
固定費は人件費や家賃など、すぐに削減できるものではありません。こういった費用は景気が良い時には気になりませんが、景気が悪くなると一気に重くのしかかります。

今のコロナ禍でも、すぐに削れる固定費はそこまで多くないはずです。

そのため、経費が多いと感じたら、まずは変動費をできるだけ削減するようにして資金が出ていくのを1でも抑えることが肝要です。

また、固定費の中でも不必要なものは解約していくなどして経費圧縮を図りましょう。

売上が入金されない

資金ショートの原因として、意外と見落とされがちなのが「売上の未入金」です。

というのも、売上はすでに立っているので、手許資金も増えたような感覚に陥るからです。

ただ、その感覚が落とし穴です。
売上が立っても入金されなければ、むしろ資金繰りのマイナスになります。

通常、売上を上げるためには仕入を行ったり、販売するための経費を支出しているはずです。

それらの費用を超えて売上を上げ、売掛金などを回収して初めて資金繰り的にプラスになります。

しかし、売掛金が回収できなければ、単純に仕入と経費を支出しただけになり、資金繰りが悪化してしまいます。

そのため「売上は回収できて初めて売上」との意識を持ち、売上回収に重きをおきましょう。

投資の失敗

投資の失敗も支出が先行するという意味で、売上未入金と同じ文脈で語ることができるでしょう。

両者の共通点は「まず支出して後に回収する」ということでしたね。ということは、支出した時点では資金繰りは悪化しているわけです。

この投資は事業への投資や株式への投資などさまざまな種類がありますが、どうしても金額が大きくなりがちです。

そういった意味で、投資の失敗は資金ショートの大きな原因の1つになりえます。

突発的な債務の発生

ある時にどかっと支払債務が発生して、資金繰りに行き詰まるというケースです。

この債務には予測できるものと予測できないものがあり、前者が「税金」後者が「訴訟」が代表例となっています。

まず、予測できる支払債務として税金があります。

これは、利益は月次の試算表を作っておけばある程度予測できるので、法人税や消費税などの税金も支払額は予測できるためです。

ただし、予測が難しい税金もあり、それは税務調査で指摘を受けた時ですね。

税務調査は数年に一度調査に来ますが、修正が必要なものは過去に遡って修正することになるので、延滞税なども多額になる傾向にあります。

一方、予測できない債務と言えば訴訟が挙げられるでしょう。

例えば、環境汚染などで突然訴訟を受けたとすれば、最終的な支払額は億単位にのぼる可能性だってありえます。

これらはいつ債務がのしかかるか予測できないので、一気に資金繰りが行き詰まる可能性を秘めています。

適切な資金調達策を講じない

上記の資金ショートの原因が襲いかかったとしても、ちゃんと資金調達をしておけば資金ショートは回避できます。

しかしながら、大半の中小企業が適時適切なタイミングで資金調達をしていないので、一気に資金が行き詰まることを経験しています。

例えばよくあるのが、現預金が月商の1ヶ月未満になってから銀行融資を検討するというパターンです。

月商の1ヶ月というと、来月には倒産する可能性もあるくらい厳しい財務内容ですが、そこまで問題を先延ばしにしているケースにも多々遭遇します。

大事なことは、先んじて資金調達をしておくことです。輸血のタイミングを間違えてはいけません。