跡継ぎ社長・ベンチャー社長を支援する財務戦略会計士の藤井です。

財務戦略の項目の一つとして「経費削減」があります。

経費を削減することで手許資金が増え、事業に回せるお金が増えるということです。

しかし、今まで見てきた企業の中には削らなくても良い費用を削ってむしろ業績が悪化するなど「経費削減の質が低い」と言わざるを得ないパターンも散見されました。

そこで、今回は「経費削減の流儀」と題して、良い経費削減と悪い経費削減の例を列挙することで、経費削減の指針に役立てていただければと思います。

どのコストを削ればよいか分からない
良い経費削減は何かについて知りたい

本日はこのような疑問にお答えします。

悪い経費削減とは

良い経費削減について考える前に悪い経費削減について考えましょう。

悪い経費削減とは何かと言うと「コストカットすることでそれ以上に経営力が下がるもの」を言います。

経営力の定義は色々ありますが、ここでは「商品力が下がり、結果として売上が下がる」と定義して話を進めていきます。

まず、商品力を下げるようなコストカットは止めた方がいいです。

具体的には「原材料費をケチる」「エース級人材の待遇を下げる」このようなコストカットは商品力の低下に直結します。

短期的には業績は改善するかもしれませんが、顧客もバカではないので、商品力の低下に気づいて徐々に御社から離れていくことでしょう。

御社や商品に絶大なブランドがあれば顧客の離反は食い止められるかもしれませんが、そうでなければ競合他社になびいてしまう可能性が高まります。

また、跡継ぎ企業の多くは顧客とウェットな関係を築いていることが多いと思います。

そのような義理と人情を大切にするような関係値であれば、関係を維持するためのコストも削るのはおすすめできません。

例えば、冠婚葬祭のお祝い金や香典などは最たるもので、社長が代替わりしたことでこのようなコストを削減する2代目経営者の方もいらっしゃると思います。

しかし、このような義理人情にかかわる費用はウェットな関係値であるほど重要であり、顧客との良好な関係値を維持するためにもコスト削減は慎重を期した方が良いです。

良い経費削減とは

以上悪い経費削減についてみてきましたが、一方で良い経費削減とはどのようなものになるでしょうか。

一言で言うと「コストカットしても生産性が上がり、売上が上がる」ようなものになります。

そして、生産性向上には「経営者の生産性向上」と「従業員の生産性向上」の2パターンがあります。

まず、経営者の生産性向上についてですが「経営者の時間を確保する」ことと同義です。

というのも、中小企業の場合は経営者自身が時間当たりの売上が最も高いはずで、経営者の時間を確保することが売上に直結するためです。

経営者の時間を確保するためには移動の時間と雑務の時間を合理化することが必要です。

例えば「公共交通機関ではなくタクシーや運転手を利用する」ことや「秘書を雇う」ことが一例として挙げられるでしょう。

また、従業員の生産性についてはいかに「IT化・外注化」するかが肝となります。

IT化・外注化ともに、従業員のルーティン業務に対する労働時間を下げ、より売上に直結する業務に時間を割くことが目的です。

IT化については昔から声高に叫ばれてきたので各社対応してきたと思われますが、近年のトレンドとして外注化があります。

すなわち、定型業務に関しては外部にアウトソースした方が結果として安くつくという考え方です。

これは、人材難で人材関連コストが高騰している現代には福音というべきものでしょう。

今ではアウトソースできるのは多岐にわたっています。

いわゆるバックオフィス(経理、人事、総務、一般事務)のほとんどは外注サービスが立ち上がっているので、アウトソースできないか積極的に検討することをおすすめします。