会計士の藤井です。
日々資金調達の相談を受ける中で「惜しい」と思うことが複数あるのですが、その一つが「当たる銀行を間違えている」というものです。
この問題、経営者によってはどの銀行も大差ない、と思われる方も多いのですが、実際は大差あるんです。
というのも、銀行(もっと言うと支店)によって融資姿勢が違ってきますし、同じ会社が違う銀行に打診するだけで、全く異なる結果が出てくるのは日常茶飯事です。
ということで、本日は正しい銀行の選び方について思うところを書いていきたいと思います。
近所のメガバンクに融資を申し込んだら門前払いされてしまった
融資を最大限引き出せる銀行について知りたい
本日はこのような疑問にお答えしていきます。
御社には適切な銀行がある
大前提として、会社によって適切な銀行が異なるという事実をまずは知りましょう。
ブランドがあるからという理由で、メガバンクにこだわっていませんか?
メガバンクが取引をしているのは基本的に大手企業、上場企業がメインです。
創業したばかりの企業は法人口座なら開けることもあり得ますが(最近は厳しくなっているようです)、銀行融資という文脈では厳しい結果になることが多いです。
詳細は後述しますが、年商の規模や業種によって付き合うべき銀行を変えていきましょう。
いわゆる銀行には、メガバンクの他に都市銀行(りそな銀行など)、第一地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合など沢山あります。
その選び方ですが、主に「規模」と「用途」によって銀行を使い分けることをおすすめしています。
規模によって銀行を変える
まず重要なのが、御社の年商によって付き合うべき銀行を変えてきましょう。
創業時であれば第一候補は政府系金融機関の「日本政策金融公庫」となります。
創業当初しか使えない無担保無保証の新創業融資を一度は検討するべきです。
また、創業間もない時期には本社近くの信用金庫や地方銀行に相談に行ってみましょう。
信用金庫の方が融資の利率は高くなるとは思いますが、融資担当者がコロコロ変わらないことが多いため、今回のコロナ禍のように非常事態時には力になってくれることが期待できます。
信用金庫の担当者にこそ、日頃からコミュニケーションを厚くして信頼関係を醸成しておくべきです。
いっぽう、年商が数億円まで成長してきたら、今度は政府系金融機関の「商工中金」都道府県トップの「第一地方銀行」あるいは規模の大きい「りそな銀行」などと背伸びせずにお付き合いができるようになってきます。
このステージになると、より大きな資金が必要になってくるので、規模が大きめの銀行をメイン行にすることを検討してください。
というのも、信用金庫などはどうしても出せる融資額に上限があるからですね。
ただ、メイン行を決める時には融資額だけで決めると後々後悔します。
というのも、中小企業向けの融資には、銀行にとってリスクが非常に少ない「信用保証協会付き融資(通称マル保)」というものがあるからです。
そのため、メイン行を決めるにあたっては銀行にとってリスクのある「プロパー融資」をどれくらい出してくれるかが決め手となります。
プロパー融資を出してくれる銀行は、御社を評価し、支援していきたいと思う現れでもあるので、いざというときに本当に頼りになる可能性が高いです。
用途によって銀行を変える
規模の他、用途によって使うべき銀行を変えることも効果的です。
具体的には「入金口座」「借入口座」「支払口座」「社長の個人口座」を分散するということです。
なぜそんな面倒くさいことをするかというと、銀行に対してむやみやたらと情報を渡さない、ということに尽きます。
例えば融資を受けた銀行が入金口座であったとすると、その銀行はいつどこから入金があったかについて全て把握できることになります。
そうなれば、借入金の返済が滞りそうになった時に、定期預金の解約を阻止するなど、入金口座を抑えにかかることだってできてしまうのです。
これに関連して、社長の個人口座が借入銀行と同じだとすると、社長個人の入金と支払いが全て追跡できることになってしまうので、やはり不利になります。
銀行側を利するような情報は渡さないというのが鉄則です。
一方、支払口座に関しては、分けなくてもそこまでの弊害はないかと思います。
ただ、ネットバンクなどを一行持っておいて、ネットバンクから振込を行うことで支払手数料を大幅に削減できることは知識として持っておいて損はありません。
特に事業上、振り込み件数が多い会社はネットバンクを活用しない手はありません。