会計士の藤井です。
銀行融資を受けるときに、通常ならばこちらから出向いて「お金を貸して欲しい」と頼み込むことが多いのではないでしょうか。
でも、その状態って立場が弱いですよね。
銀行側から見ればお金を借りに来た人に対して「貸してやる」という態度が取れることになるので、融資条件も交渉が難しくなってしまいます。
今回は銀行から「貸してください」と頼まれるような企業になるにはどうすれば良いか。
これまでと全く逆の立場になる方法について思うところを書いていきます。
いつも銀行にお金を貸してくださいと頼み込んでいる
銀行と対等の関係を築いて融資取引を行いたい
本日はこのような疑問にお答えしていきます。
今銀行の置かれている立場は厳しい
まず最初に、銀行と対等以上の関係を築く上で押さえておかなければならない状況をお伝えします。
それは「多くの銀行の経営状況は厳しい」という事実です。
これが何を意味するかというと、今は空前の売り手市場ということですね。つまり、やり方によっては借り手側の企業が優位に進めることができるのです。
一方で、大半の企業は昔の銀行優位だった状況を引きずっていて、銀行に対して強く物事が言えていません。
昔は日本経済が伸びていたので融資ニーズは非常に多かったと聞きますし、今よりも貸出金利も高かったです。
つまり、経済が伸びている時は借りたい企業も多いため、貸し出し側の銀行が有利になっていました。
今は経済が先細っているので銀行側も「新規融資先を探すのに躍起」になっている状況です。
そんな状況下ですから、正しく交渉すれば借り手側の企業が有利な条件を引き出せるのは論を俟たないでしょう。
銀行からアプローチが来るテクニック
銀行の置かれている状況をおさらいしたところで、本題の銀行から貸したいと思われるテクニック論についていくつかご紹介していきます。
①決算報告をして将来計画を語る
まず、中小企業の経営者、特に黒字が出ている企業にやっていただきたいことが「銀行に対する決算報告」です。
ここでいう決算報告とは年に一度の決算報告もそうですし、上期・下期の半期に区切っても問題ありません。
とにかく、銀行に対して自社の経営状況を伝えていくことが重要になります。
というのも、銀行側から見て、非上場企業の御社の決算書をみる機会って融資を申し込んで来た時くらいしかないはずです。
それだと、御社の最新状況を把握することができず、融資を提案するのも難しいでしょう。
この決算報告において大事なことは、将来の資金需要を予め伝えておくことです。
例えば「来期の第二四半期くらいに思い切って設備投資を計画している」などと伝えておけば、その前くらいに銀行が提案に来ることもあり得ます。
そして、実際に設備投資を行う前にこちらから銀行に借りに行くよりも、銀行側から提案に来てもらったほうが交渉しやすいのは言うまでもありません。
②格付けサイトに情報提供する
①はこちらから直接銀行に情報を提供するテクニックでしたが、情報提供のやり方としてその他のやり方もあります。
銀行が新規開拓を行う方法として、当然ながら既存貸出先からの紹介もありますが、インターネットで情報収集して新規先の発掘を行っていることもあります。
例えば中小企業の情報を得るサイトとしては「帝国データバンク」や「東京商工サーチ」などが有名です。
帝国データバンクには主に非上場企業の情報が集約されており、特に企業の点数評価は銀行側としても新規開拓先の参考にしているようです。
であるならば、我々中小企業としても積極的に当該サイトに対して情報提供をしていけば良いことになります。
堅調な業績で推移している会社は帝国データバンクなどの評点も高くなり、結果として銀行から有望な新規開拓先として見当をつけられやすくなります。
③特定の銀行に資金を寄せる
①②の情報提供というのは何も企業の業績だけではありません。
実際にこの銀行から融資を受けたいという銀行が決まっているのであれば、当該銀行にお金を寄せるのも効果的な手法となります。
というのも、銀行側では自行口座の動きは全て把握できているわけですから、口座の入出金が活発な取引先は銀行員の目に留まりやすくなります。
特にまとまったお金の入金を行っておくことで、この会社は何かあるなと思ってもらえる可能性も上がることでしょう。
番外編:9月と3月を狙う
以上、銀行から融資を受けたいと思わせる手法を3つお伝えしてきましたが、こちらから融資のお願いをする場合には打診のタイミングが一つの肝となってきます。
結論から言うとやはり「9月と3月は銀行融資を積極的に検討」してもらえます。
なぜかというと、銀行は基本的に3月決算なので、半期決算と年度決算で銀行員の成果としても区切りができるからですね。
私の経験上、特に3月は年度決算の時期ということもあり、積極的に融資を検討してもらえる印象です。
ということで、こちらから融資を打診せざるを得ない場合は銀行員の事情を勘案して打診すると良い結果に結びつきやすいです。