会計士の藤井です。

前回の記事で、保険の見える化についていくつかポイントを解説しました。

おさらいすると「保険の資産評価を早めに行っておく」ということでしたね。ただ、保険以外に不動産も事業承継やM&A上論点になることが多いのです。

というのも、不動産は保険と違って、会社の重要な事業資産であり、金額も保険より桁が違うことが多いです。

そこで、本日は事業承継やM&Aでの不動産の見える化についてお伝えしていきます。

自社保有している土地の評価額が分からない
事業に使っていない遊休不動産を沢山保有している

本日はこのような疑問にお答えします。

不動産の一覧表の作り方

事業承継における不動産の磨き上げを行う前に、まずは所有及び賃貸している不動産を一覧化しましょう。

不動産リストには以下のような項目を含めるとよいでしょう。

  • 物件名
  • 住所
  • 面積
  • 利用目的(本社、工場、倉庫、店舗など)
  • 所有者(自社所有、賃貸)
  • 担保の状況(A大手銀行、B地方銀行など)
  • 会計上の帳簿価額
  • 固定資産税評価額

この不動産リストですが、自社所有の不動産だけではなく、賃貸不動産も含めておくとなお良いです。

不動産の鑑定評価をやっておく

保険の見える化のところでもお伝えしましたが、特にM&Aの財務デューデリジェンス(買収監査)となると資産項目の時価評価を行うことになります。

保険は解約返戻金や保険積立金の金額を保険会社に照会することでその時価評価額が入手できますが、不動産の場合はもう少し大がかりです。

土地の場合は不動産鑑定士の鑑定評価を受けることがベターではありますが、難しい場合は固定資産税評価額で金額を洗い出しておくとよいでしょう。

遊休不動産は処分を検討

前述のやり方で不動産リストを作成すると、有効活用されていない遊休不動産などがリストアップされるかもしれません。

そのような事業に不要な不動産は事業承継やM&Aにおいて処分を検討することになります。

というのも、遊休不動産は将来にわたってキャッシュを生み出さないため、実際の財務デューデリジェンスで評価がつかないこともあり得ます。

であれば、遊休不動産は売却処分して現預金に換えておいた方がより資産が厚くなるという意味で一考に値します。

なお、遊休不動産の中でも地方の不動産はなかなか買い手がつかないケースもあり、事業承継の準備の早い段階で売却に向けて動き始めるとよいでしょう。

不動産のランニングコストを見積もる

ここまでは主にBS(貸借対照表)の観点から不動産の磨き上げについてお伝えしてきましたが、もう一つあるとすればそれはPL(損益計算書)への影響です。

事業承継やM&Aにおいては引継ぎ先が引き継いだ後も不動産を使うことになりますが、その使用からは維持費や修繕費などの費用がかかることになります。

これらの費用は将来にわたって生じるものであり、実務上はシミュレーションを行って、その見積もりを将来のPLに反映させておくべきです。