会計士の藤井です。

会社を創業したらまず最初に行うのは法人の銀行口座開設ですよね。

その銀行は所在地の近くの銀行であったり、手数料が安い銀行であったり、選ぶにあたって色々な基準があると思います。

しかし、こと融資を考えたときには付き合うべき金融機関についてある程度の基準があります。

本日は、日々融資支援を行う中で思う「中小企業の付き合うべき金融機関」について自分の思うところを書いていきます。

どの銀行の法人口座を開設しようか迷う
融資を考えたときにどの銀行をメインバンクにすべきか迷っている

本日はこのような疑問にお答えします。

銀行は大きく分けて4つある

中小企業が選ぶべき銀行について語る前に、そもそも日本にはどのような銀行があるのか確認しておきましょう。

融資という文脈では、日本には大きく分けると5つの銀行があります。

  • メガバンク
  • 地方銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合
  • 政府系金融機関

このほかにもネットバンクや信託銀行など様々な種類の銀行がありますが、今回は割愛します。

メガバンクは誰もがご存じの三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行です。大企業を中心に取引を行っています。

地方銀行とは各都道府県に本店がある銀行で、地域経済に大きな影響力がある銀行です。

地方銀行にも第一地銀と第二地銀があり、設立の経緯に違いがあって区別されていますが、どちらも普通銀行で業務自体に差はありません。

その主な違いは第一地銀の方が規模が大きく、第一地銀の方が貸出金利が少しだけ低いというくらいです。

第一地銀で有名なのは横浜銀行やきらぼし銀行、第二地銀は東京スター銀行や東日本銀行などがあります。

次に地域密着の金融機関が信用金庫と信用組合です。

信用金庫は地域の方々が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした金融機関で、信用組合も同じようなコンセプトを元に運営されています。

主に中業企業や個人と取引を行っていますが、両者は営業エリアが決まっているため、エリア外の信金・信組と取引を行うことができません。

最後に政府系金融機関には「日本政策金融公庫」と「商工中金」があります。

どちらも政府系金融機関ですが、付き合う企業の規模が違います。

日本政策金融公庫は創業融資に強く、比較的小規模な企業や個人事業主を相手にするのに対し、商工中金はある程度大きめの会社(年商数億円以上)と取引しているケースが多いです。

なお、両者の大きな違いとして「預金機能」があります。
公庫は預金機能がないので、借入金は他の銀行に振り込まれることになりますが、商工中金はメガバンクなどと同じ機能を備えてる点で大きく異なります。

メインで付き合うべきは地銀か信金

銀行の種類を整理したところで、ここからは本題である付き合うべき金融機関について私見を述べていきます。

まず、一般的な中小企業がメインで付き合う銀行は「地銀か信金」になると思います。

というのも、メガバンクは規模として大きすぎてあまり面倒を見てくれないですし、政府系金融機関は基本的に貸し出しに特化していて、融資を含めた金融サービス全般を考えるとメインは難しいからです。

さて、メインとなりうる地銀と信金ですが、どちらをメインバンクとするかは企業によって異なると考えています。

まず、創業してからある程度の年商(数千万円)が上がってきて、今まさに成長している企業は地銀の方が相性が良いです。

理由は主に3つあります。
「地銀の方が調達金額が多い」
「地銀の方が営業エリアが広いので長くお付き合いできる」
「地銀は営利企業で信金は非営利法人」

第一に、地銀の方が貸出金額が多い傾向にあることです。これは地銀の方が規模が大きいので理解しやすいでしょう。

地銀だと規模にもよりますが、数億円から数十億円の融資はザラにある印象です。

第二に、信金は営業エリアが狭く、業容拡大によってオフィスを移転した場合は、信金と取引できなくなることがあります。

一方で、地銀の場合は該当の都道府県内に支店が豊富ですし、隣接都道府県にオフィスを移転しても対応していることが多く、特に急成長企業は長くお付き合いできます。

第三に、地銀自体が営利団体なので、儲かっている会社にお金を貸すなどして、なるべく利益を確保したいというインセンティブが信金よりもあると感じています。

そのため、急成長している企業は地銀の方が相性がよいと思います。

余談ですが、IT企業やスタートアップなど新しめのビジネスをしている企業は地銀かメガバンクの方が相性がよいです。

これは我々の経験則になるのですが、銀行の規模が小さくなるほど、新しいビジネスへの理解度が低くなる傾向にあります。

我々が支援している案件でも、信用金庫だとビジネスモデルが全く理解されなくて非常に困った一方で、地銀では「なるほどそういうことですね」とすぐに理解してもらえました。

当然ながら、銀行側は理解できないビジネスを評価することはないので、融資担当者が事業のポテンシャルを理解してくれることは非常に重要です。

一方、信用金庫が向いている企業もあります。
まず、創業したてでそこまでの売上や実績がない会社は信用金庫が手厚くサポートしてくれることでしょう。

また、信金が慣れ親しんでいる業種である製造業や小売業などは信金の方が相性がよいと思います。

御社の業種や成長フェーズによって是非アプローチを変えてみてください。

政府系金融機関はサブとして使う

地銀や信金をメインバンクとして使う一方で、サブとして政府系金融機関から融資を受けることも念頭に置いておきましょう。

その理由は2つあり、「メインバンク一行依存を排すること」と「政府系金融機関の使い勝手が良い場合がある」ことです。

まず、メインバンクのみならず銀行一行依存というものは色んな意味で弊害があります。

これは良く考えれば当たり前で、仕入先を1か所に絞ると供給が不安定になるだけでなく、交渉上不利になります。

同じように、銀行を一つに絞った場合、他行との比較ができませんので、金利は高く据え置かれる可能性が高まるのです。

また、政府系金融機関の方が使い勝手が良い場面があります。

例えば創業融資に関しては日本政策金融公庫が一番使いやすいです。

金利は多少上がりますが、創業直後で信用のない会社に実務上は1,000万円程度まで無担保・無保証で融資を出してくれます。

これは、創業直後の会社にとって大変ありがたいことです。

また、コロナ融資のように、政府が旗を振って中小企業支援を行う場合、政府系金融機関が民間金融機関に先んじて優遇された融資メニューを用意することがしばしばあります。

そのような優遇制度を使えば、支払利息を圧倒的に削減できる可能性を秘めているので、やはり政府系金融機関も同時に取引するのが合理的です。

なお、日本政策金融公庫は「民間金融機関を補完する存在」と自ら公言しているので、やはりサブとして使うのが理にかなっています。