会計士の藤井です。

第三者が事業を引き継いで無事に事業承継を行うことができた場合、引退する経営者の元にはある程度のまとまった金額が入ってくることになるでしょう。

その場合、次に課題となるのが、それらのまとまった資金をどのように運用して次の世代に引き継いでいくかということです。

というのも、事業承継とは「株式の承継」と「人の承継」がメインとなりますが、事業承継の前後で「資産の承継」も課題になるからです。

そこで、当記事においては事業承継後の資産運用と承継をどのようにしていくかについて解説していきます。

事業承継で得たまとまったお金をどうすれば良いか分からない
相続のことを考えると、どうやって資産を承継すべきか悩んでいる

本日はこのような疑問をお持ちの方にお答えしていきます。

事業承継後の資産運用は相続を念頭に

事業承継後の資産運用に関しては基本的に資産を増やすよりも「資産を守る」ことを念頭におく方がよいでしょう。

というのも、現経営者においては事業を引き継いだ後にどうしても「相続」という話がついて回るからです。

それでは、相続というイベントを鑑みたときに最適な資産運用となるのは何かというと、基本的には「不動産」と「保険」となります。

なぜ、不動産と保険になるのか、具体的に見ていきましょう。

資産運用の手法①:不動産

まず真っ先に検討すべきなのが不動産投資です。

というのも、不動産投資をすることによって相続税の圧縮を図ることが可能になるためです。

このからくりは単純で「不動産の実勢価格と相続税評価額の差額を狙う」手法となっています。

相続税評価額は土地と建物で若干の計算方法の違いがありますが、概ね実勢価格の7-8割程度の金額となることが多いです。

そのため「資産の評価は換金価値が原則」という相続税の立場からすれば、20-30%資産の圧縮が図れ、その分だけ税金が減ることになります。

また、不動産投資そのもののメリットとして賃貸から得られる収入を長期にわたって安定的に得られるというものがあります。

この定期安定的な収入は引退後の年金の足しにしてもよいでしょうし、あるいは子供に相続させて、次の世代が安定した生活基盤を築くのにも役立ちます。

ということで、事業承継後の不動産投資は節税と安定収入という観点から、非常に使い勝手が良いと思います。

資産運用の手法②:保険

次なる資産運用の手法として候補に挙がるのが保険です。

保険といっても沢山も保険がありますが、ここでいう保険とは主に「生命保険」のことを指します。

生命保険も不動産と同じように相続税対策として使われることが多いです。というのも、生命保険の中でも終身保険は一定の額が相続時に非課税となります。

具体的には「法定相続人の数×500万円」まで非課税となります。法定相続人が4人いれば2,000万円という小さくない金額ですね。

また、節税という文脈以外でも、相続税には一度に大きな支払が発生することが多いので、相続税の支払いのために生命保険をかけておくこともできます。

というのも、相続税の支払いは基本的に現金となるので、現金を用意しなければなりません。

しかし、不動産や非上場株など換金が比較的難しい財産を相続した場合は、現金の確保にとても苦労することになります。

最悪のケースとして、相続税が払えずに一生税金がついてまわることになりかねません。税金は自己破産しても消えないからです。

その点、生命保険は現金で入ってくるので、とても使い勝手が良いものとなっています。