会計士の藤井です。

前の記事で資産項目の磨き上げについて解説いたしました。

本日は事業承継の準備段階において損益計算書にどう磨きをかけていくかお話したいと思います。

ことM&Aを想定した場合、損益計算書においては営業利益が売却額の基準となることが多いので、損益計算書のブラッシュアップが後の役に立ちます。

事業承継に向けてコストを最適化したい
M&Aでより高い売却額を実現したい

本日はこのような疑問にお答えします。

損益計算書の固変分解が吉

損益計算書の磨き上げを行うには「変動費」と「固定費」という概念をまずは理解する必要があります。

変動費とは売上に比例して発生する費用で、固定費は毎月必ず固定的に発生する費用のことを指します。

具体例を挙げると、変動費は材料費、商品仕入高、外注費など、固定費は給与などの人件費、地代家賃、通信費などが挙げられます。

そして、変動損益計算書では「売上-変動費=限界利益」という計算をまず行います。そして次に「限界利益-固定費=営業利益」と計算します。

この限界利益ですが、いわゆる粗利とは少し違う概念で「固定費を賄うほどの利益を商品・サービスから生み出せているか」という視点で見ることができます。

もし限界利益が固定費を賄えていないのであれば商品の収益性が低いか固定費が多すぎる、ということになります。

また、限界利益がマイナスであれば売れば売るだけ赤字になるので、その商品の販売は中止したほうがよい、という判断になりえます。

このように固定費と変動費を分けて計算することで、御社のビジネスの収益性が見えてくることになります。

収益の計上区分を見直す

損益計算書の固変分解は費用の内容を固定費と変動費に組み直すことをやりましたが、今度は収益のお話です。

私は仕事柄様々な会社の損益計算書を見る機会がありますが、収益の計上区分にもう少し工夫の余地があると感じています。

上述しましたが、M&Aにおいて損益計算書で重視されるのは営業利益です。

とするならば、営業外利益や特別利益のうち、本業から生じた収益は売上のその他売上として計上することで営業利益が今よりも大きくなります。

例えばですが、中小企業の中には不動産を所有していて、不動産を賃貸している会社もあることでしょう。

その場合、不動産賃貸収入は営業外収益として計上されている会社が多いと思います。

しかし、定款の事業目的に「不動産賃貸業」を加えておけば、不動産賃貸業もれっきとした主たる事業となるので、「営業外収益ではなく売上として堂々と計上」することができます。

このようにちょっとした工夫ですが、損益計算書を良く見せることができます。