会計士の藤井です。

負債を株式に転換できるDES(Debt Equity Swap)という方法をご存知でしょうか?

このDESですが、事業承継の準備の中で有効活用できることがあります。

本日は、事業承継におけるDESの活用方法について思うところを書いていきます。

会社に多額の役員借入金がある
銀行借り入れの利息負担がかなり重い

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

DES(Debt Equity Swap)とは

DES(デッド・エクイティ・スワップ)とは、一言で言うと「負債と資本の交換です」。

会社が債権を有している債権者(銀行など)に対して株式を発行することで、金銭債権と株式を交換する手法をDESと言います。

DESによって何が起こるかというと、会社側の負債は資本に変わることで負債が少なくなります。

一方で、銀行などの債権者は新たに発行された会社の株式を入手できるので「債権者ではなく株主になる」という特徴があります。

事業承継におけるDESの活用方法

DESの特徴を抑えたところで、事業承継の準備段階でDESをどのように活用できるかみていくことにしましょう。

負債と支払利息の圧縮

負債と支払利息を圧縮できるのがDESの1番のメリットです。

というのも、DESの仕組み上「負債を資本に交換する」ので、これまで負っていた借入金などの負債がなくなり、結果として負債にかかる支払利息も低減します。

負債が減って自己資本が増えるので、バランスシートが改善され、銀行のスコアリング上評価が上がることが期待されます。

先代経営者の相続税対策

中小企業の中には、資金繰りが苦しくて社長が会社に対してお金を貸し付けたこともあるのではないかと思います。

これは会計上「役員借入金」として負債項目に計上されているはずです。

この役員借入金は元々は社長個人のお金だったので、相続税法では相続財産に含むものとされています。

この借入金は銀行のスコアリング上「負債ではなく資本」としてみなされるので、会社によっては社長個人に返済せず、そのままにしている会社が多いことでしょう。

そのため、個人に返済される見通しがなければ相続税が一方的に上がるだけとなってしまいます。

ここで、DESを使って役員借入金を資本に振り替えてしまえば、相続財産及び相続税を削減することができます。

このようにDESは先代経営者の相続税対策という文脈でも使うことができるのです。

DES利用上の注意点

このように負債を資本に振り返ることで財務内容の改善ができるだけでなく、事業承継を見据えた相続税の対策になるDESですが、使用上の注意点がいくつかあるのも事実です。

株式の評価をしなければならない

まず最初に気をつけたいのが、DESを使うにあたって株式の評価をしないといけないと言うことです。

というのも、債務と引き換えに債権者に対して株式発行するのでその株価がいくらかを評価しなければなりません。

肝心の評価方法についてですが、国税庁の回答によると以下とされています。

債権の時価は、合理的に見積もられた回収可能額(債務者の実態貸借対照表の債務超過額に基づき債権者調整が行われ、事業再生計画における損益見込等を考慮し、債務者及び債権者双方の合意のもとで算出された回収可能額)に基づく評価

国税庁「企業再生税制適用場面においてDESが行われた場合の債権等の評価に係る税務上の取扱いについて」

なお、DESの評価に関しては、会社側で通常「債務免除益」が生じることになります。

というのも、回収可能額は通常債務額面よりも低くなることが多いからですね。

法人税額が上がる可能性がある

DESは資本金額を増やすものなので、場合によっては法人税が増えてしまうこともありえます。

例えば、中小企業の場合、資本金を1,000万円以下や1億円以下にしている会社が多いと思います。

仮にDESで資本金が1,000万円を超えてしまったら、法人住民税の均等割額が70,000円から180,000円に上がります。

また、資本金が1億円を超えたら、大法人に該当するので外形標準課税が新たに導入されたり、交際費が損金算入できなくなったりと、法人税の特典が複数失われることになります。

そのため、DESで増加する資本金の額によってはDESそのものを取りやめたほうが良いという判断になる可能性もあります。