会計士の藤井です。

コロナ禍で多くの事業者の皆様が売上減少などに苦しまれているというニュースが頻繁に報道されている今日。

その中で、このコロナを機会に、事業を後継者にバトンタッチする「事業承継」について考えている社長の方も多数でてきていることでしょう。

本日は、私の父親の話をしてみようと思います。
結論、「事業承継の準備をせずに事業が廃業」してしまったという話です。

そのような経験から、会計士である私が事業承継の支援をすることになったのですが、事業承継をしようかどうか迷っている中小企業の社長の方に参考になれば幸いです。

仕事一筋だった父親

私の父親は兵庫県の田舎で生まれ、若くから独立して自分の腕一本で事業を切り盛りしていました。

具体的には、もともと勤務していた保険会社の代理店として保険を販売していたのですが、メインの事業としては冠婚葬祭や仏壇に供える花を自分の畑に植えて、それらを束ねてトラックに積んで売り歩きに行くというものでした。

昔の時代はそのような冠婚葬祭用のお花はよく売れたようで、田舎で公共交通機関が発達していない中、花を配達してくれるのでお客様からは喜ばれていたようでした。

肝心のお花も少しの世話をしてやれば生えてくるようなもので、正直言って利益率は結構高かったと思います。

規模としては個人事業に毛が生えたくらいでしたが、父親は毎日毎日花を束ねてより良い商品を作っている姿が今でも脳裏に焼き付いています。

父親の死去により廃業

そのような事業をかれこれ15年以上はやっていたでしょうか。

私も小学生から高校生まで時間があるときに手伝いをしました。トラックに乗せられて、隣町に配達に行き、お客様からお代金をいただいた体験が自分のビジネスの原点といえます。

私には2人の兄がおり、長男・次男はともに一部上場企業のサラリーマンとして長く勤務しています。

長男次男と私は歳が離れていて、彼らが小さい時にはまだ事業が軌道に乗っていなかったので、かなり貧しい思いをしたようです。なので、彼らは父とは違う安定した道を選んだとのことでした。

となると、事業承継的には誰も継ぐ人がいませんね。
父親から真意を聞く機会には恵まれませんでしたが、おそらく息子には継がせたくなかったのでしょう。

かくして、父親は何の準備もせぬまま亡くなり、事業は廃業。かつて収益を生み出していた畑は雑草が生い茂り、結局二束三文で土地を貸し出す、ということくらいしかできませんでした。

相続での出来事

事業承継に関連して、相続というテーマがあります。
もちろんのことですが、相続に関しても父親は何も準備をしておらず、父親亡き後に我々相続人が相続財産及び負債を必死に探し回ることになりました。

相続税の申告や節税に関しても、誰も全く知識がなく、結局知り合いのJAの人からコンサルタントを紹介してもらいました。

大阪から高級車でコンサルタントの方が家にいらして、結構な高額報酬を取られた記憶は残っています(笑)。

事業の終わりはデザインすべきだった

このように、父親の事業は事業承継の準備をしないことで廃業し、遺言などの事前準備もなく相続も残された被相続人で進めることとなりました。

今思い返すと、もっとやりようはあったのではないかと思います。

まず、事業承継においては競合他社に声をかけることで花屋の事業を引き取ってもらうことは十分可能だったと思います。

売上としてはそこまで大きくなかったようですが、利益率が高いのでそれなりの金額でM&Aが成立した可能性が高いです。

少なくとも、今現時点において土地を二束三文で貸すよりかははるかに大きな経済的利益が得られていたはずです。

また、父親が手塩にかけた事業も他社に引き取ってもらえれば事業として存続します。

父親が育ててきた花はどういう形であれ、顧客のもとに届き続けるでしょうし、もしかしたら違う形・違う商品として空間を華やかにしているかもしれません。

事業承継は単に会社が次世代にわたって存続するだけでなく、創業者の想いや商材が形を変えて、その時代に沿う形で人々の暮らしを豊かにし続けるものです。

このように考えると、事業承継というのは後回しにする問題ではなく、今から真剣に取り組むべきものだと思わないでしょうか。

もし、事業承継でお困りの方がいらっしゃいましたら、廃業と承継を経験した公認会計士が秘密厳守で皆様のお話をお伺いしますので、お気軽にお問合せください。