会計士の藤井です。

2020年はコロナイヤーということで、中小企業を支援するために多くの給付金や補助金が世に放たれました。

代表的なのが「持続化給付金」や「持続化補助金」ですね。

持続化給付金は要件に該当していれば誰でも給付を受けることができましたし、持続化給付金の採択率も比較的高めだったようです。

弊社も2020年8月に持続化補助金の採択を受け、現在は補助事業を行っているところです。

そして、今年もコロナは収束せず、むしろ勢いがましている中、政府から新たな補助金が放たれようとしています。それが「事業再構築補助金」です。

この補助金、やりようによっては数千万単位で補助金を受けられるという近年稀に見る補助金であります。

本日は、現在時点で出ている情報に基づいて、事業再構築補助金の概要と使い方について思うところを書いていきます(随時更新していきます)。

コロナの影響により事業を大幅に転換しようと思っている
事業の大幅転換にはコストがかかるので補助金を使いたい

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは、ポストコロナ時代の経済社会に対応するため企業の思い切った事業再構築を支援する補助金です。

事業再構築には「新分野展開、業態業種転換、事業再編など」を指し、これらを通じて規模の拡大を目指す企業を支援します。

具体的な事業再構築の例には以下が列挙されています。

業態活用イメージ
喫茶店飲食スペースを縮小し、新たにコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施。
居酒屋オンライン専用の注文サービスを新たに開始し、宅配や持ち帰りの需要に対応。
レストラン店舗の一部を改修し、新たにドライブイン形式での食事のテイクアウト販売を実施。
弁当販売新規に高齢者向けの食事宅配事業を開始。地域の高齢化へのニーズに対応。
衣服販売業衣料品のネット販売やサブスクリプション形式のサービス事業に業態を転換。
ガソリン販売新規にフィットネスジムの運営を開始。地域の健康増進ニーズに対応。
ヨガ教室室内での密を回避するため、新たにオンライン形式でのヨガ教室の運営を開始。
デイサービス一部事業を他社に譲渡。病院向けの給食、事務等の受託サービスを新規に開始。
半導体製造半導体製造装置の技術を応用した洋上風力設備の部品製造を新たに開始。
タクシー新たに一般貨物自動車運送事業の許可を取得し、食料等の宅配サービスを開始。
航空機部品製造ロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立上げ。
伝統工芸品製造百貨店などでの売上が激減。オンラインでの販売を開始。
和菓子製造和菓子の製造過程で生成される成分を活用し、新たに化粧品の製造・販売を開始。
土木造成・造園自社所有の土地を活用してオートキャンプ場を整備し、観光事業に新規参入。
画像処理サービス映像編集向けの画像処理技術を活用し、新たに医療向けの診断サービスを開始。
経済産業省HP「事業再構築補助金」

これを見ると幅広い会社が当該補助金を使えることがわかるでしょう。

事業再構築補助金の対象企業

事業再構築補助金の活用イメージを抑えたところで、肝心のどの企業が対象になるかについても確認しておきましょう。

【対象企業】
1.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。

2.事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。

3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、
又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。

経済産業省HP「事業再構築補助金」

要するに「対象期間の売上が10%以上減少している企業が、認定支援機関等と事業計画を作成」することで事業再構築補助金の申請が可能になるわけですね。

任意の3ヶ月の売上と前年同期比較をするので、大半の企業が申請対象になる予感がしております。

事業再構築補助金の補助率と対象経費

対象企業になると分かったとしても、どのくらい補助されるのか、どのような経費が補助の対象になるかが実は最も大事です。

というのも、補助率が低いと企業の持ち出しが増えますし、使える対象経費の範囲によっては非常に使いにくい補助金となってしまうからです。

この点、補助率は1/2〜2/3とまずますで、事業再構築補助金の対象経費は比較的多岐にわたっています。

総じて、補助金として使いやすいのではないかと思います。以下、企業ごとの補助率と対象となる経費を列挙します。

企業ごとの補助率

企業ごとの補助額と補助率は以下となります。

企業類型補助類型補助額補助率
中小企業通常枠100-6,000万円2/3
中小企業卒業枠(400社限定)6,000万円超-1億円2/3
中堅企業通常枠100-8,000万円2/3(〜4,000万円)
1/2(4,000万円〜)
中堅企業グローバルV字回復枠
(100社限定)
8,000万円超-1億円1/2
経済産業省HP「事業再構築補助金」

中小企業卒業枠については、事業計画期間内に①組織再編②新規設備投資③グローバル展開のいずれかにより資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠となります。

募集要項から読み取れることとして、中小企業卒業枠は中小企業の中でも大きめの会社が審査に通りそうな予感がしております。文字通り中小企業卒業のための補助金ですね。

また、中堅企業グローバルV字回復枠は、グローバル展開を果たす事業が要件となっています。

そのため、そもそもグローバル展開に適していない商材を扱っていると、審査で厳しい評価を受けそうな感じですね。

なお、中小企業の定義は、こちらのリンクで確認することが可能です。

業種ごとによって資本金基準と従業員基準があり、これを超えると中堅企業になります。

中小企業卒業枠は、補助金によってこれら2つの基準を超えるくらいの成長を遂げて欲しいと政府が考えていることの証左でしょう。

補助対象経費

補助対象経費について現時点で分かっているのは以下の通りです。

①建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)
②研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
③広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)等
【注】 補助対象企業の従業員の人件費及び従業員の旅費は補助対象外です。

経済産業省HP「事業再構築補助金」

補助対象経費の詳細は、募集要項に詳しく記載されるので、それを待ってからの解説となります。

しかし、上記をみた感じとしては、比較的広い範囲で対象経費を設定している感じがあります。

特に新規事業や海外事業を始めるときは①の設備系の経費に加えて、②研修系、③広告宣伝系の費用はイニシャルで発生する傾向にあります。

そのため、これらの費用が補助金でカバーされると中小企業等としては心強い一方、本当に事業展開に役立つサービスを選定する力が試されることになると思います(無駄なサービスを選定すると資金繰りが悪化する)。