会計士の藤井です。

以前の記事で、事業承継後にまとまった資金が入った場合の資産運用方法について解説しました。

記事中では事業承継後の資産運用は主に「不動産」と「保険」で行うのがお勧めです、という話をしました。

そこで、本日は不動産に焦点を当てて、事業承継後に不動産投資をすべき理由について考察していきます。

定年後の資産運用をどうすべきか悩んでいる
不動産投資をすると節税ができると聞いた

本日はこのような疑問にお答えします。

不動産で大幅な節税が可能

まず第一に不動産には節税メリットがあるという点です。

節税と一口に言っても色々ありますが、ここでは「所得税」と「相続税」の節税についてお話していきます。

所得税の節税方法

所得税の節税方法は主に「給与所得」と「不動産所得」の損益通算という形で行うことになります。

このアイデアは不動産所得で赤字を出して、会社などでもらっている給料や役員報酬と相殺することで所得を減らそう、というものです。

不動産所得=年間の総収入金額 – 必要経費

ポイントとしては、「必要経費」を合法的に増やして不動産所得を赤字に持っていくことです。

ここで、不動産の必要経費には例えば以下のようなものが該当します。結構経費になるものが多いと思います。

  • 不動産の管理費及び修繕費
  • 不動産管理会社への委託料
  • 融資を受けた場合の支払利息
  • 不動産購入時の税金(不動産取得税や印紙税)
  • 固定資産税・都市計画税
  • 減価償却費
  • 各種保険料
  • 不動産経営に関連する経費(旅費交通費や通信費など)

これらの必要経費をうまく使うことで不動産所得を抑えて節税することが可能になります。

相続税の節税方法

不動産は毎年かかる所得税だけでなく、相続税の節税対策としても有効となってきます。

この仕組みとしては「建物の相続税評価額が市場価格より安い」ことを利用したものになります。

例えば、現預金1億円を相続するとまるまる1億円が相続税の対象になるのに対して、現預金を不動産に変えると、ケースにもよりますが7,000万円程度まで評価額が下がることが多いです。

つまり、現預金を不動産に変えるだけで相続財産が数十%下がり、結果として相続税の節税につながるのです。

また、相続税には「小規模宅地等の特例」という優遇策があり、被相続人(亡くなった人)が住んでいた土地、事業や賃貸していた土地について、一定の要件を満たす人が相続したときに相続税評価額が最大80%下がるというものです。

宅地の面積には上限があるものの、特に土地の評価額が高い首都圏においてこの最大80%減の効果は大きいと言えるでしょう。

老後の安定収入を得られる

2つ目のメリットとして「老後の安定収入を確保できる」というものがあります。

事業承継を終えて、ある程度まとまった金額が入ってきたとしても将来はどうなるか分かりません。

最近では、老後に2,000万円必要など議論されているところですが、この数値はあくまで参考値であって人によって異なるというのが正直なところだと思います。

そういった側面からも、老後に安定した収入源を持っておくことの重要性は論を待たないでしょう。

そこで、不動産投資の登場です。
投資にはさまざまありますが、毎月安定して収入が入ってくるという視点では不動産投資は非常に優れています。

しかも「不動産投資自体が潤沢な自己資金を持っている人に有利なゲーム」です。

というのも、不動産投資を行うためには銀行から融資を受けて不動産の購入資金を調達することが一般的です。

不動産は一棟で買うと億単位の値段になりますし、融資の返済期間も長めに取れるので、融資を使うメリットが大きいからですね。

しかし、裏を返せば融資が出なければ不動産を買えないことになり「物件に融資がつくこと」が実質的な投資条件となっていることが大半です。

一方で、潤沢な自己資金があれば、融資のことをそこまで気にしなくて良いので、良い条件の物件を手に入れやすくなります。

オーナーとしても融資付けが条件となっている投資家よりも自己資金でパッと出せる投資家の方を優先しますので、交渉上も有利に立てます。

何より、利息費用が軽減されるので、不動産投資から得られる利益も高くなるという訳です。

このように、自己資金を潤沢に持っていれば、不動産投資について一般の投資家よりも圧倒的に有利な位置に立てるので、結果として投資としての成功率が高まることも見逃せません。

インフレ対策ができる

最後に今後の日本経済や世界経済のことを考えた時に、不動産投資は「インフレ対策になる」ということも付け加えておきましょう。

正直なところ、今の日本はインフレとは程遠いような状況ではあります。なので、インフレと聞いてもピンとこないことでしょう。

ただ、今はそうであっても将来どうなるかは誰にも分かりません。

事実、第二次世界大戦後から1949年まで日本は激しいハイパーインフレに見舞われています。

また、今の日本の借金は1,000兆円を超えており、GDPの2.4倍までに膨れ上がっているという事実もあります。

この借金をどう捉えるかは諸説あり、ここではその結論を割愛しますが、少なくとも健全な状態ではないことだけは確かです。

そのような環境下では、円の価値が下がるということも視野に入れておくべきではないでしょうか。

仮に円の価値が下がれば、せっかく事業承継で入ってきたお金の価値も下がってしまいます。

そのような中でも不動産投資で得られる定期収入は物価指数に連動するように上昇していくので、不動産投資はインフレに強いのです。