跡継ぎ社長を支援する財務戦略会計士の藤井です。

跡継ぎ企業を含めた中小企業の資金調達方法として一番に挙がるのは銀行融資です。

銀行融資は中小企業にはメジャーな資金調達手段ですが、融資枠や信用保証枠には上限があることや、決算書をベースとしたスコアリングが未だ蔓延していることもあり、一部の企業は融資以外の選択肢が必要になることもあります。

そこで更なる成長に意欲を燃やしている企業が一度は検討したいのが「ファンドからの出資」という手段です。

本日は中小企業がファンドから出資を受ける際の方法論について思うところを書いていきます。

融資枠の関係上、これ以上の借入は難しい
出資と経営アドバイスを受けて更なる成長を遂げたい

本日はこのような疑問にお答えします。

ファンドとは

ファンド(fund)とは投資や運用を目的として集めた資金を運用する基金です。

ファンドは投資家などから集めた資金を投資対象に対して投資し、運用益を得ることを目的としています。

事業承継の分野においてもファンドを活用して更なる企業成長を目指すケースも増えています。

また、近年では外部の後継者が事業承継を行う際にファンドが株式の買取資金を出すということもよく目にします。

ファンドの種類はたくさんあり、近年では多くのファンドが立ち上がり始めました。

・中小機構ファンド
・日本投資ファンド
・中小企業投資育成
・銀行系ファンド
・証券系ファンド
・PEファンド

以下、跡継ぎ企業から見たファンドの選び方について少し解説を加えようと思います。

最適なファンドを選ぶ方法

ファンドといっても様々で公的なファンドもあれば、民間ファンドもありますし、規模感もファンドによって様々です。

ここでは、ファンドを選ぶ際に外せない3つの視点について紹介します。

規模感(投資額)

まずファンドの志向する規模感が重要です。

というのも、ファンド毎に1件あたりどれくらいの規模の投資を行うかが概ね決まっており、その規模感がマッチしないとそもそも検討対象にならないからですね。

例えば、著名なPEファンドは投資額が数百数千億円に上ります。

なので、PEファンドが対象とするのは上場企業か小さくても年商が大きい中堅企業であり、普通の中小企業がPEファンドから出資を受けるケースはほとんどないはずです。

一方、銀行系のファンドだと銀行の規模にもよりますが、数千万円からの出資というようなケースも存在します。

ファンドからの出資額によって企業の資金調達金額が決まりますので、ファンドの運用総額と1社あたりの出資額はチェックするようにしましょう。

得意な業界

続いて業界や業種です。

ファンドは出資した後に経営参画して企業価値の向上を目指すことになりますので、通常は経営支援も行ってくれます。

ここで、ファンド毎によって業界・業種の経験値が違うので、当然ながら経営支援にあたってパフォーマンスにばらつきがでてくることでしょう。

そこで、出資を受け入れる側としても、ファンドの過去事例と経営支援を行ってくれる担当者の業界経験やスキルは一通りチェックしておくようにしましょう。

運用方針

ファンドの運用方針についてもチェックが必要です。

というのも、ファンドの根本的な目的は出資して企業価値を上げてExit(投資回収)することで、運用益を得ることです。

その運用益を最終的にはファンドの投資家(LP)に返していくことになりますので、ファンドには基本的に償還期限があります。

そのため、ファンドがどのような出口戦略を志向しているのかは確認しておきましょう。

例えば、保有した株式の売却や株式公開であれば短期的な目線であることが多いので、どのくらいの時間軸でファンドが関与するかは重要な論点です。

ファンド出資の注意点

最後にファンド出資を受ける際の注意点を沿えておきたいと思います。

経営権をどれくらい渡すか考える

ファンドからの資金調達の対価として、企業は株式を差し出すのが通例です。

ここで、ファンドから資金調達すればするほど、創業者や一族の持ち分割合は下がってしまいます。

ファンドによって取得する持分の比率は変わってきますが、概ね1/3から過半数を取得するというところが多いです。

1/3以上を取得された場合、会社の重要な意思決定に対して拒否権が発動できなくなります。

また、株式の過半数を取得された場合は、会社の意思決定や取締役の選任に関して口出しが難しくなってしまいます。

株式を譲渡して会社から退き、余生を充実させたり次のチャレンジを行うというのであれば問題ありません。

しかし、引き続き会社に関与したい場合は、譲渡する株式の割合には非常に注意すべきですし、しっかりとファンドと話し合う必要があります。

ファンドの運営方針を確認する

最適なファンドを選ぶ方法でもお伝えしましたが、ファンド出資を受ける前に今一度ファンドの運営方針を確認してください。

確認すべき事項としては、投資期間が短期なのか長期に渡るのか、あるいは利益重視なのか社会性を重視するのかなどです。

銀行融資の場合は繰上返済さえしてしまえば、合わない銀行との関係を断ち切ることができます。

しかし、一度ファンドからの出資を受けると後戻りすることができません。

資本構成は容易に変更するのが難しいためです。

なので、ファンドの運営方針と自社のビジョンや経営戦略が合致するのか、ファンドから役員を送り込まれたとしても問題ないか、などが検討すべき論点となります。