跡継ぎ社長を支援する財務戦略会計士の藤井です。
跡継ぎ企業が更なる成長を遂げる方法として新規事業を立ち上げるやり方があります。
新規事業の記事は主に国内事業を想定したものでしたが、海外での事業展開も更なる成長を求める方法として是非検討しておきたいところです。
そこで、シンガポールにて日本企業のアジア展開を支援した経験をもとに、跡継ぎ企業が海外展開をする方法について思うところを書いていきます。
国内市場は縮小していて活路を見出しにくい
次なる成長の手段として海外展開を検討している
本日はこのような疑問にお答えします。
海外展開をする目的
まず、跡継ぎ企業を含めた中小企業が海外進出する意義はどこにあるのか確認しておきましょう。
新たな市場の開拓
まず第一に「新市場を開拓できる」ということが挙げられます。
言わずもがなですが、日本の人口はこれから減少していくことが予想されます。
2040年には総人口が1億人を割り込むとの試算もあり、人口が減ればそれだけ市場のパイは狭まってしまうことが容易に予想できます。
日本国内で新規事業によって新たなニーズを掘り起こすのも重要ではありますが、人口や所得の増加が著しい海外市場を狙うという方法もあります。
日本のお隣の中国は約13億人、東南アジアには約6億人の人口を抱えており、個々人の所得も増加しているので有望な市場と言えます。
優秀な人材の獲得
前述したとおり、日本の人口が減っていくということは市場のパイが減るだけでなく、働き手が減るということでもあります。
目下の日本の課題として地方を中心に働き手が不足しているというのがありますが、優秀な海外人材を獲得できる可能性があるのも海外展開のメリットであります。
私自身アジアで働いていた時の実感として、優秀な人は(日本人よりも)全然優秀だし勤勉だなと思うことが多かったです。
もちろん言語や文化の壁を超える必要はありますし、そこに一定以上の苦労があるのですが、人材不足が叫ばれている日本において戦力になることでしょう。
進出方法
中小企業が海外進出するためにはやり方がいくつかあるのですが、大枠に分けるとするとゼロから立ち上げるか現地企業を買うかの2パターンに分けられます。
ゼロから立ち上げ
自社で経営資源を持ち寄ってゼロから立ち上げる方法です。
まず現地法人や現地支店を設立する前に、展示会に出展するなどしてそもそも現地でニーズがあるかどうか確認します。
あるいは、消費者向けの商材であれば越境ECサービスを使って実際に販売してみるということもおすすめです。
大企業であれば話は別ですが、大半の中小企業はリスクを低減したうえでまずはテストマーケティングを行ってみるのがよいです。
一定以上のニーズが見込まれるのであれば、次は現地で信頼できるビジネスパートナーを見つけるフェーズに入ります。
そのビジネスパートナーに自社の商材を取り扱ってもらい、代理店になってもらうのが正攻法です。
このビジネスパートナーの質によって海外展開の成果は圧倒的に変わってくるので、ある程度の時間をかけてでも納得できる相手を探すことが重要です。
そして、代理店販売である程度の成果が出るころには、進出国での事業ノウハウもそれなりに蓄積されているでしょうから、次は自社リソースでの事業展開も同時並行的に考えていきます。
ここらへんで現地法人の設立と送り込む海外人材の選定が論点となってくるはずです。
クロスボーダーM&A
最近では自社単独での立ち上げではなく、すでにある会社を買収したり、出資するケース(いわゆるクロスボーダーM&A)も増えてきています。
このクロスボーダーM&Aですが、一番の魅力は「進出国での事業ノウハウとリソースを一挙に獲得できること」に尽きます。
日本ならまだしも、海外ですと事業展開のノウハウや人脈がないところから事業を始めないといけないので、ゼロから立ち上げる方法は難易度が高いのが現状です。
一方、M&Aで海外展開すれば、進出先の国を知り尽くした現地企業を子会社化あるいは関連会社化することになるので、素早い事業展開が可能となります。
気を付けないといけないことは買収・出資する会社の信頼性でしょう。
国を跨ぐとどうしても現地会社の事業実態というものが見えにくくなりますし、会計帳簿も複数あったりと、どれが本当か迷うことが往々にしてあります。
そこで重要なのがトップ面談とデューデリジェンスです。
出資先の経営者との膝を突き合わせた対話によって、相手の本気度を探ります。国が違えど、事業への想いは相通じるものがあるためです。
また、クロスボーダーM&Aは国内よりも透明性が低いので、信頼できるコンサルティング会社からしっかり財務・法務デューデリジェンスを行うようにしましょう。
海外展開資金の工面
最後に海外展開をするとして、資金をどのように集めるかという命題も会社によっては論点になることもあります。
ここに関して、大半の会社は自社の「内部留保」から資金の拠出を行うことが多いです。
海外展開資金に関して融資を受ける方法がないわけではないです。
しかし、海外展開自体が比較的リスクの高い手法であるので、ゼロから立ち上げかクロスボーダーM&Aにかかわらず、大方の資金は内部留保から拠出することをおすすめします。