ベンチャー社長・2代目社長向け財務戦略会計士の藤井です。

事業環境が激変している現在、設備投資、新規事業、業務提携、M&Aなど中小企業の経営者が大きな意思決定を迫られるケースは増えていると思います。

しかも、これらの大きな意思決定は不確実性の中で決断しないといけないことが多く、先代経営者に意見を伺うケースもあることでしょう。

しかしながら、先代経営者も全知全能ではないですし、時代が変わっているが故に過去の成功体験がそのまま適用できないこともあります。

本日は、日々2代目企業の財務戦略パートナーとして意思決定支援を行っている私が思う、経営意思決定の精度を上げる方法について思うところを書いていきます。

過去の大事な意思決定をハズしたことがある
重要な意思決定の根拠が欲しい

本日はこのような疑問にお答えします。

先代社長の勘は正しいとは限らない

経営意思決定を行う上でまず最初に思いつくのが「先代経営者に聞く」という手法です。

確かに先代経営者は長年事業を取り仕切ってきたので、後継者が引き継いだ事業についてもかなりの経験があることでしょう。

しかし、時代は刻々と変わっています。

急激に進んだデジタル化によって、これまでの事業の前提が大幅に崩れてしまった業界もあると思います。

例えば、小売業界はその一つで、オンラインで商品が売れるようになってから小売業界の存在価値が問われるようになってきました。

そのような中でより良いものを見つけて仕入れて売るんだ、という先代経営者が居たとしたらどうでしょうか?

恐らくうまくいかないのではと思います。

先代経営者の多くはなんらかの強い成功体験を持っていることが多いです。

だからこそここまで事業が継続してきているのですが、その成功体験が不確実な現代には足かせになることも大いにあります。

先代経営者の勘は全て正しいとは限らないのです。

先代経営者とのコミュニケーションの秘訣

それでは先代経営者から何を聞くべきか。
それは「事業のエッセンス」ですね。

エッセンスというと解釈が難しいので「本質」と言い換えることができるでしょう。

多くの後継社長は、先代社長に対して「うまくいく方法」ばかり聞こうとしますが、その方法論は時代遅れになっているかもしれません。

そうではなく、時代が変わっても不変である「事業の核心」について聞くべきだと思うのです。

小売業の例に立ち戻りましょう。
その本質は顧客に寄り添う「提案営業」にあると思うのです。

だとすれば、徹底的に顧客のニーズを理解して、その課題を解決する商品を提案すればよい。

顧客との関係が築けるのもオフラインならではの小売業の利点であり、顧客の課題の深堀りができれば、商品の提案の幅も圧倒的に広がることでしょう。

オンラインだと顧客のニーズが顕在化した商品を指名買いすることになりますので、基本的に課題に根差した商品提案は難しいです。

このように先代経営者に聞くべきなのは「これからどうしていくべきかという事業戦略論」ではなく「事業の本質」に立ち戻った質問であると考えます。