会計士の藤井です。
新型コロナウイルスが蔓延して、一部の業界ではかなりの打撃を受けている一方で、コロナ特有の環境によりむしろ売上が増加している業界もあります。
また、打撃を受けている業界でも、ビジネスのあり方を変えることで事業拡大しているような会社も枚挙にいとまがありません。
例えば、飲食業は一般的にコロナ禍では苦しい展開を強いられていますが、フードデリバリーは都会を中心としてむしろ活況であったりします。
このようにコロナ禍にあっても事業を拡大している会社様は成長のための資金が必要で、むしろ資金繰りに逼迫していることでしょう。
融資(デットファイナンス)での資金調達を前提とした場合、壁になってくるものが一つあります。それが「年商の壁」です。
今回は企業がこの「年商の壁」を超える方法についていくつか共有したいと思います。
年商を超える融資を受けたい
大型調達を行って勝負に出たい
今回はこのような疑問に答えていきます。
資金調達には年商が壁になる
金融機関から融資を受けるにあたって壁となるのが売上規模です。
というのも、融資を受けた後の返済原資は営業利益、もっというと、日々の売上金がもとの原資になるからです。
ここで、他の銀行から新たに融資を起こして返すというやり方もないことはないですが、この状態は所謂「自転車操業」というものであり、全く健全ではありません。
本則としては、お客様から売上をいただき、その中から経費を支払いつつ、借入金を返済することになります。
そのため、売上は返済原資の最たるものであり、この数値を超えて銀行が融資をすることは相当勇気が要ることなのです。
これから資金調達をする中小企業の皆様には「年商を超える融資は非常に難易度が高くなる」ということを頭の隅に入れておいていただければと思います。
日ごろから返済実績を積み重ねる
とはいえ、急拡大しているようなビジネスモデルにおいては、急激な売上成長率の一方で年商が追い付いていないケースも多くあると思います。
そのような拡大企業はどのようにして年商を超える資金調達を実現すべきでしょうか。やり方としては3つあります。
まず第一に「既存の金融機関に対して返済実績を積み重ねる」という方法があります。
この手法では、普段からお世話になっているメインバンクから何度も融資を受けて返済をしていることが前提となります。
金融機関は初回の融資では金額的に非常に保守的な動きを見せるのですが、一度返済実績を積んでしまえば、かなり柔軟に融資条件を考えてくれます。
そして、このご時世、地方の地銀信金は貸出先に困っていて、お金を貸したくても貸す相手がなかなかいない、というジレンマに陥っています(一時的なニーズであるコロナ融資は除く)。
そのような金融機関にとって、今まさに成長している企業は非常にありがたい融資先となります。順調に事業が拡大すれば、より多くの資金ニーズに対して融資をすることができます。
ただ、どれだけ急成長していることがわかっていても、初回の融資はどうしても保守的になります。
これは銀行側のリスクがないと言われる保証協会付き融資であっても保守的になります。
だからこそ、日ごろから返済実績を積んでおくことで、いざというときに予想を超える融資額が引き出せることがあります。
私が接した事例では、年商5,000万円程度の企業に対して、地銀が2.4億円の融資を提案した例があります。
これはかなり極端な事例ですが、日ごろから信頼を積み重ねていたことが功を奏したと言える事例です。
ということで、すでに融資を受けている既存金融機関がある場合は、まずその金融機関に融資の相談をすることが最優先となります。
キャッシュを生む事業を始める・買う
次の方法として「キャッシュを生む事業を始めるあるいは買う」ことです。
自社の年商が低くても、キャッシュを生む新規事業や買収先があれば、そこから生まれたキャッシュフローが返済原資となり、貸したお金を返してくれるだろう、という算段です。
例えば、利益率が非常に高くて、かつ、その事業が成功する確率が高い場合、銀行としては比較的大型融資を出しやすくなります。
また、買収資金を調達する融資においては、買収先が儲かっている、あるいは潤沢なキャッシュがある、ということであれば銀行も納得して融資資金を提供する可能性があります。
このように、既存事業で十分な返済原資が作れなくても、新規事業等で返済原資が捻出できそうな場合、年商を超えて融資を受けられる可能性が出てきます。
VCまたは投資家から出資を受ける
最後に、年商を超える融資資金が必要だけれども、既存事業や新規事業などで十分な返済原資を捻出できない場合はどうすればよいでしょうか。
こちらに関しては、融資(デットファイナンス)で資金調達するのはかなり難易度が高くなります。
なので、融資ではなく「出資」を検討するのがよいでしょう。
出資であれば、過去の指標である年商ではなく、将来性に応じてお金を出してもらえるので、基本的には過去の年商に縛られることがありません。
将来儲かる絵さえ描ければ、VCや投資家も納得して出資してくれるかもしれません。
一方、金融機関においては、事業の将来性は一つのチェックポイントであるものの、それよりも過去の決算書の内容を重視することが多いです(スタートアップを除く)。
そのため、年商が低くても将来性に自信があるのであれば「出資を受ける」という選択肢を積極的に検討するとよいでしょう。