会計士の藤井です。
昨年の3月から始まっている通称「コロナ融資」は売上減少基準を満たせば当初3年間は実質無利子・無利息になるという大盤振る舞いの融資制度です。
このコロナ融資に関連して、利息コントロールが重要である業界から弊社に多数の問い合わせが入りました。
不動産投資家からです。
「コロナ融資で不動産は買えるのでしょうか?」という質問です。
本日は、コロナ融資で不動産投資ができるのかについて思うところを書いていきます。
実質無利子で不動産投資をしてみたい
コロナ融資の資金使途がどういうものか気になる
本日はこのような疑問にお答えしていきます。
コロナ融資の概要
いわゆるコロナ融資は中小企業の資金繰りを助けるために、政府系金融機関では昨年3月に、民間金融機関では5月に創設されました。
このコロナ融資の最大の特徴は、無担保はもちろんのこと、一定の売上が減少していれば「実質無利子」になるとして注目を集めました。
特に、今まで比較的高い利率で借りていた中小企業にとっては、利息費用を削減するという意味で非常に美味しい融資だったように思います。
コロナ融資は何度もアップデートを重ね、この記事を書いている2021年2月現在においては以下のような条件となっています。
項目 | 内容 |
---|---|
無利子融資限度額 | 6,000万円 |
返済期間 | 15年以内 (据置期間 5年以内) |
利率 | 売上減少基準を満たすことで当初3年間は無利子 |
保証料率 | 売上減少基準を満たすことで全額補助 |
連帯保証 | 原則代表者のみ 一定要件下で経営者保証の免除が可能 |
無利子融資枠は当初は3,000万円だったのですが、今では中小企業支援の旗印の元に6,000万円まで倍額されました。
また、返済期間も通常の運転資金であれば5年というのが最も多いケースですが、コロナ融資は制度上15年以内となっています。
そういった意味で、今回のコロナ融資はかなり条件の良い融資制度だったということが分かると思います。
不動産投資とコロナ融資
コロナ融資の概要をおさらいした上で、ここからはコロナ融資が不動産投資に使えるのかみていくことにしましょう。
結論としては「不可能ではないけど、諸条件よりお勧めはしない」です。
制度趣旨と資金使途の観点
まず、制度趣旨の観点より、コロナ融資は不動産投資向きではないということが挙げられます。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方
日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」
日本政策金融公庫にはコロナ融資の制度趣旨として上記のような文言があります。
確かに、一時的な業態悪化を食い止め、中長期的に売上を上げるために物件を購入するという説明もロジックが通っていなくはないです。
しかしながら、コロナ融資の場合は基本的に運転資金で借りることになると思いますので、運転資金で借りると言っておいて投資をするのは資金使途違反になる可能性があります。
特に、公庫を含む金融機関は「投資に対して融資をしない」のが原則です。
そして、重大な資金使途違反が見つかった場合は、次から借りられないリスクもあります。
そう言った意味で資金使途を偽ってコロナ融資を借りるのはあまりお勧めできません。
融資条件の観点
上記の話を100歩譲って不動産投資ができるとしても、コロナ融資の融資条件の観点から、やや使いにくいと言わざるを得ません。
というのも、「返済年数が制度上は15年以内となっているのですが、実務上は10年で据え置かれることが多い」ためです。
これはどういうことを意味するかというと、1年当たりの返済金額が通常のアパートローンより大きくなってしまうので、賃貸経営的に持ち出しが多く発生してしまうからです。
不動産投資は耐用年数が長い物件に対して返済期間の長い融資を受け、長期的に家賃収入を得ながら返済していくのが基本戦略です。
ところが、コロナ融資は返済期間がアパートローンより短いため、どうしてもキャッシュフロー的に厳しくなってしまうのです。
そう言った意味で、コロナ融資で買えるとしたら、収益性が高く、価格が低い物件ということになるでしょう(木造など)。
不動産関連でコロナ融資はこう使え
では、コロナ融資が全く使えないかというとそんなことはありません。
不動産賃貸業のみなさまにもコロナ融資は引き続き有効と考えております。
それでは、どういった使い方をおすすめするかというと「運転資金で借りて、既存の物件の修繕に当てる」という戦略です。
というのも、不動産投資本体であれば、返済年数の短さからキャッシュフローがかなりタイトになることが予想されます。
しかし、修繕であれば、そこまでのお金もかからないのでキャッシュフローを痛めるということもないはずです。
既存物件の修繕を行うことで、より物件が魅力的に保たれ、空室率も下がり、結果として売上が安定するのではないでしょうか。
関連して、金融機関は資金使途が「修繕」の場合は貸しやすいという事情もあります。
そういった意味で、このコロナ融資は新規物件の購入というよりは既存物件のアップグレードに使うのが適していると考えます。
銀行としても「不動産投資」ではなく「不動産賃貸業」を営んでいるみなさまのビジネスが高い確率で上向きになるような資金の使い道を望んでいます。