会計士の藤井です。
コロナ禍の長期化により、企業の中には日々の資金繰りに悩まれている経営者の方も多いのではないでしょうか。
「売上自体が減っているのでどうしようもない」
このような声も聞こえてきますが、まだまだできることはたくさんあります。
実は資金繰りを改善する方法ってシンプルに4つしかないのです。
本日は資金繰りを改善するための4つのアプローチについて少しお話ししていきたいと思います。
ウィズコロナ経済の長期化により資金繰りが悪化している
売上が下がっているが資金繰りを改善させたい
本日はこのような疑問にお答えしていきます。
銀行融資は本質的な改善にならない
資金繰りを改善する方策として皆様の頭に最初に思い浮かぶこととして「銀行融資」があると思います。
ご存知の通り、銀行に赴いて「お金貸してください」と言うやつですね。
確かに、今のようなコロナ禍においては、長期的な見通しが立たないのでとりあえず(保険的に)借りておく、と言うのは有効な打ち手ではあります。
この銀行融資、目先の資金繰り改善には役に立つのですが、返済原資が作れないならばどこかで行き詰まってしまいます
逆に言うと、将来利益を出して返済原資が作れそうなら銀行融資は有力な資金繰り改善策となります。
そういった意味で「返済原資なき融資」は本質的な資金繰りの改善にはならないという点を覚えておきましょう。
資金繰りを改善する4つの視点
そこで、資金繰りを改善する手法の登場です。
私が考えるに、資金繰りを改善する方法は4つしかありません。以下で1つずつ解説していきたいと思います。
入金を増やす
第一に、入金を増やすというアプローチです。
「入金を増やすってのは売上を増やすことと同義ではないか」という意見もありますが、実は正反対です。
通常売上を増やしたら短期的に資金繰りは悪化することが多いです。
特に何かモノを作っている企業は仕入サイトと売上サイトに入金があるので、その傾向が顕著です。
そうではなく、売上のその先にある入金を増やすということなんです。
これは主に「売上を取りっぱぐれない」ことと「先に売上の一部をもらう」ことを実行するだけで達成できます。
例えば「取引先の与信管理を厳格に行う」ことでちゃんと入金までしてもらえるかを判別するとか、あるいは取引に際して「前渡金や着手金」をもらうことも有効です。
なぜこんな話をするかというと、結構な数の経営者が「売上」のことばかり考えて「入金」まで頭が回っていないというのがあります。
入金されなければ売上はないのと同じです。
むしろ、売上を上げるために仕入や経費がかかっているので、逆に資金繰りが辛くなります。
「遠足は帰るまでが遠足」というように「売上は入金されるまでが売上」という気持ちでいることが重要です。
入金を早くする
次のアプローチとして、入金を早くすると言うやり方もあります。
これも中小企業の経営者がそこまで気を配っていない点であります。
「入金はいつか必ずされるもの」
このように気楽に構えていると時にして痛い目に遭うことになります。
特に今はコロナ禍。
取引先を疑えとは言いませんが、ある日突然取引先が倒産する可能性もゼロではありませんし、入金を遅らせて欲しいと言われることだってあり得る話です。
そうなってしまった場合、こちらの資金繰り計画を修正することになるかもしれません。
入金を早める方法としては「請求書を即時に発行する」ことや「日頃から銀行に将来の資金需要を伝えておく」ことが挙げられます。
前者は当たり前の話ですが、後者は意外と見落とされがちな論点なので注意が必要です。
と言うのも、銀行は融資を受けたいと言ってもすぐにお金を出してくれる訳ではありません。
当然ながら新規融資であれば審査部の審査をパスする必要がありますし、保証協会付き融資の場合はさらに時間がかかります。
そこで、あらかじめ銀行担当者に将来の資金ニーズを伝えておくことで、行内手続きの一部を準備してもらえれば、比較的スムーズに事が運ぶことでしょう。
支出を少なくする
次は支出サイドのお話しです。
支出を減らす、というとまず最初に節税が挙がってくるかなと思います。
ただ、節税は何かと注意が必要でして、経費を増やして節税すると節税額以上にキャッシュアウトが多くなるので、逆に資金繰りは悪化してしまいます。
では、どうすれば良い感じに節税ができるかと言うと、一つあるのは「資本金の額を下げて法人税の優遇を受ける」と言う点は挙げられます。
また、回収が見込まれない債権などを損金に落とすことでも資金繰りを痛めずに合理的な節税が可能です。
その他、支出を少なくする方法としては、当たり前の話ですが無駄な支出を削減することです。
よくある話ですが、信頼関係が出来上がっているので、相手の言い値で商品などを買っていたりしませんか?
信頼関係は重要ですが、その値段があまりにも市場価格よりも高い場合には交渉の余地があります。
一度冷静になって「相見積もり」をとってみることは有効な手立てになるでしょう。
支出を遅らせる
支出を遅らせることも資金繰り改善には有効です。
支出を遅らせることはイコール取引先から借りていることとほぼ同義です。色んなテクニックがありますが、できる範囲で検討してみましょう。
取り組みやすいのは「法人カードで決済を行う」ことでしょうか。
振り込みですと振込手数料がかかるだけでなく、キャッシュアウトも一瞬で行わなければなりません。
その点、法人カードで支払えるのであれば、手数料も基本はかかりませんし、何より実際の支出が最大で約2ヶ月後になります。
また、購入ではなく「リース契約」にできないかも検討に値します。
その固定資産は本当に買わなければならないのか、と言う話です。
購入すれば基本的にその場でキャッシュアウトが生じてしまいますが、リースの場合は月額でお金を払えば良いのでかなり資金繰り的には助かります(もちろん利息分は上乗せされますが)。