会計士の藤井です。
以前の記事でファクタリングの使い方について解説しましたが、資産をベースとした資金調達のやり方は他にもあります。
今回はABLという手法をお伝えしていきます。
ファクタリングは売掛債権を売却して資金調達する方法であるのに対して、ABLは売掛債権を含む資産を担保に融資を受けるというものです。
ファクタリングの中でも特に「2社間ファクタリング」は手数料が非常に高いので、2社間ファクタリングしか使えない状況下では、ABLも検討していきましょう。
ファクタリングの手数料が高すぎて経営を圧迫している
資産は沢山あるので、それをベースとして資金調達したい
本日はこのような疑問にお答えしていきます。
ABLとは何か?
ABL=アセット・ベースド・レンディングとは、平たくいうと売掛金や動産を担保にして融資を受ける方法です。
ここで言う動産とは不動産以外のもので換金価値があるものを言います。例えばですが、在庫(原材料や商品)、機械設備、売掛債権などが該当します。
これらの中で担保価値(=換金価値)のあるものがあれば、担保にすることで資金調達を実行することができます。
ABLのメリットはファクタリングに比べて利息・手数料が安いことや、固定資産を持たなくても融資を受けられるということが挙げられます。
会社によっては不動産を保有していない会社も多い一方で、売掛債権や在庫などはどの会社も基本的に保有しているはずです。
そのため、ABLは幅広い資産を担保とした融資サービスと捉えると理解が進みます。
ファクタリングとの違い
ABLを語る上で、ファクタリングとの違いについては必ず触れておかなければなりません。
というのも、ABLとファクタリングは売掛債権をベースとして資金調達をするので似ているように感じます。
しかし、ABLは「売掛債券を担保に融資を受ける」一方で、ファクタリングは「売掛金を譲渡」する点で根本的に異なります。
この違いがどのように影響を及ぼすのか、以下で見ていきましょう。
利息・手数料
まず金利と手数料に関しては圧倒的にABLの方が安いです。
というのもABLは純粋な借り入れであるのに対してファクタリングは売掛債権の割引だからですね。
これはどう違ってくるかと言うと、基本的にABLは「年利」です。一方でファクタリングは「月利」なのです。
そのため、ファクタリングを年利ベースに直すと非常に高くなることがわかるはずです。
特に、2社間ファクタリングは3者間ファクタリングよりも手数料が高くなることが多いです。これは、2社間ファクタリングはより回収リスクが高いからですね。
そういった意味で、2社間ファクタリングは最も避けるべき資金調達の1つだといえます。
なお、ABLは「年利」3-7%のレンジに落ち着くのに対して、ファクタリングは安くて「月利」1%、高ければ20%以上取られることもあります。
調達金額
ABLとファクタリングで金調達の金額も変わってきます。
ABLの場合は、どちらかと言うと銀行融資に近いので、「売掛金保有会社つまり御社の信用力」によって資金調達金額が変わってきます。
一方で、ファクタリングの場合は御社が保有している「売掛債権自体の信用力」に左右されます。つまり御社の売掛先の善し悪しですね。
なお、ファクタリングで調達できる金額は「売掛債権の範囲内」ということになり、売掛債権の額を超えて資金調達をすることができません。
資金調達のスピード
ABLとファクタリングで資金調達のスピードも変わってきます。ABLの場合は銀行融資に近いので、申し込みから2-3週間かかることが多いでしょう。
一方で、ファクタリングの場合は最短即日入金されることもあります。
そういった意味で、本当に資金調達を急いでいる場合はファクタリングが有効な施策となります。
審査の観点
最後に、審査の観点からもABLとファクタリングで違うものがあります。
ABLで重要になってくるのは「担保となる売掛債権等と御社の信用力」です。
一方、ファクタリングの場合は御社の信用力というよりも「売掛先の信用力や売掛債権の回収能力」が重要な観点となってきます。
ABLをうまく使う方法
ここまではABLとファクタリングの違いを明確にしながら、ABLの特徴について解説してきました。
ここからはABLをうまく使う方法について思うところを書いていきたいと思います。
まずはABLを優先して検討
まず大事なことが、「ファクタリングよりもABLを優先して検討する」と言うことです。
というのもファクタリングは手数料が非常に高く、御社の経営を圧迫する可能性があるためです。
一方で、ABLは「担保を供する銀行融資に近い」ので手数料は比較的低め止まっています。
そういった意味で、資金調達を本当に急がないのであればABLを検討すべきです。
ABLには向いている企業がある
次に、ABLには向いている企業と向いていない企業があります。
ABLに向いている企業は、貸借対照表の資産のうち「流動資産が多い会社」です。
これらの企業は固定資産を持たなくても事業ができる業種が多いでしょう。
これらの会社は売掛債権や在庫などを抱えていることが多く、ABLは使いやすいと思います。
一方で、不動産等の固定資産を多く保有している会社は、その担保余力を使って銀行融資を検討するのが良いと思います。銀行融資の方がABLよりもさらに金利が低いからです。
ということで、企業が保有する資産の内容によって選択すべき資金調達の手法は変わってくるということです。