会計士の藤井です。

最近、地方の企業から相談を受けることが多いのですが、財務状態の詳細を確認していくと「ファクタリング」を利用していることが結構あります。

ファクタリングとは平たくいうと「売掛債権の現金化」手法です。

売掛金や未収入金は期限が来るまで通常は振り込まれないことが多いですが、期限を待たずに短期に現金化できるのが大きなメリットです。

しかし、裏を返せば、資金繰りの逼迫など短期に現金化しなければならない事情があるといえ、利用企業の足元を見て高利でファクタリングを提供している会社がたくさんあります。

本日は、ファクタリングの実態と有効な使い方について資金調達を専門としている会計士が解説します。

資金繰りが逼迫していてどうしようか迷っている
ファクタリングを利用しているが利子負担が非常に大きい

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

ファクタリングの仕組み

本題に入る前に、ファクタリングの仕組みについておさらいしておきましょう。

ファクタリングとは売掛債権を売却して早期現金化することですが、この売掛債権の取り扱いには2パターンあります。

それが「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」ですが、大きな違いは得意先が登場するか否かです。

3社間ファクタリングとは

3社間ファクタリングは「御社」「ファクタリング会社」「得意先(売掛先)」が登場人物となり、御社が「得意先に対して債権譲渡をする旨の通知または承認を得る」必要があります。

この3社間ファクタリングはファクタリング会社から見て未回収のリスクが比較的低いのでファクタリング手数料が安くなります。

一方で、御社から見てファクタリングをしている事実が得意先にバレてしまうという最大のデメリットがあります。

2社間ファクタリングとは

2社間ファクタリングは得意先に対して債権譲渡の通知を行う必要がないので、ファクタリングの事実は得意先にバレません。

ただ、売掛債権の回収をファクタリング会社ではなく御社が担うことになる分、ファクタリング会社にとってリスクが高いので、どうしても手数料が高くなってしまいます。

このようにファクタリングは「取引先への通知」と「手数料」の2つがトレードオフとなってしまう取引なのですが、こと中小企業においては、2社間ファクタリングを使わざるを得ない事情があります。

そもそも、ファクタリングを使う会社というのは「資金繰り的にあまりよろしくない会社が使う」というイメージがありますし、実際のところそうです。

となると、得意先にファクタリング利用の事実を知られてしまったら、得意先も「あの会社は倒産するかもしれない危ない会社だ」というふうに解釈し、取引停止となってしまう可能性だってゼロではありません。

そういった事情もあり、取引先にファクタリング利用の事実が見えない2社間ファクタリングを使わざるを得なくなるのです。

ファクタリング会社としては、そのようなジレンマに陥っている会社の足元を見て、極めて高い手数料で2社間ファクタリングを薦めているところもあるようなので注意が必要です。

ファクタリングの手数料はいくらか

では、実際にファクタリングの手数料はどのくらいでしょうか?

これはファクタリングの種類によって大きく異なりますし、それぞれの手数料の決まり方も考え方に違いがあります。

まず、3社間ファクタリングの手数料相場は1-10%程度に収まることが多いです。

つまり、100万円の売掛債権をファクタリング会社に売却すると、90-99万円が振り込まれるということです。

一方で、2社間ファクタリングは10-30%とかなり割高となっています。どうしてここまで手数料に差が開くのか以下で見ていきましょう。

ファクタリングの種類

3社間ファクタリングは取引先から債権譲渡の承認を得ることになりますので、ファクタリング会社にとっての回収リスクは比較的低いです。

一方、2社間ファクタリングに関しては、売掛債権の回収はファクタリング利用者に委ねられますので、回収リスクが比較的高いです(売掛債権を回収してもファクタリング会社に払わないなど)。

そういった面もあり、どうしても2社間ファクタリングの方が手数料率が高くなってしまします。

登記費用と経費

3社間ファクタリングの場合は取引先から債権譲渡の承認を取れているので特に問題になりませんが、2社間ファクタリングの場合は債権譲渡登記が必要になる場合があります。

というのも、2社間ファクタリングの場合、どうしても売掛債権の二重譲渡が問題になってしまいます。

それを防ぐために、ファクタリング会社は当該債権を自分のものだと証明する(対抗要件を備える)ために、登記を行う必要が出てくるのです。

この債権譲渡登記ですが、司法書士の報酬50,000〜100,000円と登録免許税が最低でも7,500円かかってきます。

これらの費用を回収するために、2社間ファクタリングの手数料はどうしても高くなります。

一方で、2社間ファクタリングで債権譲渡登記を要求しないケースもありますが、その場合は回収リスクが上がってしまうので、どちらにせよ手数料を上げることになってしまいます。

売掛債権金額と取引回数

売掛債権の金額が多ければ多いほど、ファクタリング会社としても利益を出しやすいので、手数料が下がる傾向にあります。

また、取引回数が多ければ多いほど、ファクタリング利用者の状況もよく分かりますし、リスクもよくわかってくるので、手数料が多少安くなる場合があります。

そのファクタリング、本当に必要ですか?

ここまでファクタリングの手数料を見てきましたが、特に2社間ファクタリングの場合は手数料がかなり高くなってしまします。

ここで、資金繰りの専門家である私が最も恐れているのが通称「ファクタリング沼」というものです。

ファクタリング沼の恐ろしさ

一時的にファクタリングを利用するならまだそこまで傷は深くならないでしょう。

しかし、資金繰り管理がうまくいっていない企業はファクタリングの利用が常態化し、やがてファクタリング沼から抜け出せなくなってしまいます。

このファクタリング沼にハマると、毎月売掛債権の割引を行うようになり、手数料が非常に嵩むことになり経営を圧迫します。

例えば、極端な例ですが、毎月1,000万円の売上があって全額を手数料10%のファクタリングに出すとしましょう。

そうなると、ファクタリングの手数料率10%まるまる営業利益が下がることになります。

これは企業の収益性を削ぐ非常に恐ろしい事態です。

しかも、ファクタリングに依存すると、その手軽さが故に他の資金繰り手段を考えることを放棄する傾向にあり、ますますファクタリングから抜け出せなくなってしまいます。

これがファクタリングの怖さです。

日々の資金繰り管理と銀行融資が肝

このファクタリング沼を回避するためには、そもそもの話として「即日に資金が必要な事態を避ける」ことが最も重要となってきます。

そうすれば、高い利息や手数料を取られずに済みます。

というのも、これは資金調達の法則なのですが、資金が出るまでの期間が短ければ短いほど資金調達の費用(代償)が高くなる傾向にあります。

確かにファクタリングは最短即日で入金されるなど便利であることは間違いないです。

しかし、上述した通りデメリットも大きいので、あくまで最終手段の一つとして最後まで取っておくことをお勧めします。

そしてファクタリングの前に考えるべきは「月次で資金繰りの管理を徹底すること」や「現預金残高が厳しくなる前に銀行融資を申し込むこと」です。

月次での資金繰り管理を徹底することで、もしかしたらファクタリングを利用しなくても切り抜けられるかもしれません。

また、銀行融資を受ければ取られる手数料(利息)を最小に抑えて資金繰りを安定させることができます。

もし資金繰りが上手く行っていなければ、ファクタリングの前にABL(資産担保融資)を検討すると良いでしょう。

大半のファクタリングは「月利」数%〜30%ですが、ABLの場合は「年利」数%で融資を受けることができますし、資産が担保となっているので返済も比較的安心です。

なお、ファクタリングを利用せざるを得ない状況に追い込まれているのであれば、手数料の低い3社間ファクタリングを利用することをまずは検討しましょう。

一方で、取引先と関係上2社間ファクタリングしか難しい場合は、ファクタリングの比較サイトを使うなどして、できるだけ手数料を下げる努力を行ってください。