会計士の藤井です。

本日は、日々問い合わせを受けている中小企業の共通点というか、ある種のお悩みについてお話しようと思います。

それは「儲かっている、あるいはこれから儲かるビジネスだけどキャッシュがない」というものです。

黒字倒産という言葉があるように、利益が出ていても倒産するケースがあるのはなにやらおかしいとおもいませんか。

ただ、この儲かっていて銭足りない、というのは結構ありふれた話であるとともに、中小企業が最も気をつけなければならない事の一つです。

利益が出ているのに資金繰りが苦しい
売上は増えているが現預金残高はそれほどない

本日はこのような疑問にお答えします。

売上=キャッシュではない

まず初めに、中小企業の経営者が最も勘違いしそうな点について。

案件を受注して売上が立つと、自分の会社が豊かになったつもりで経費を使ったり、安易に人を雇ったりする会社があります。

ただちょっと待ってください。
売上=キャッシュ、ではないんです。

BtoCだとまた別かもしれませんが、大半の会社は「売上→売掛金→現預金」というプロセスを辿ることになります。

売掛金を回収してこそキャッシュが増えるのであって、売上が上がった時点ではお金は1円も増えていないことに注意してください。

むしろ、、、
売上を上げるために仕入原価や経費としてお金が出て行っている会社がほとんどですよね。

だとすれば「売上が上がっただけではキャッシュフロー的にはマイナス」で、入金されるために全力を尽くさなければならないことは明白です。

成長企業ほどお金が必要

よく誤解されるものとして「成長企業は売上が急激に伸びているので借入は必要ない」というものがあります。

断言しますが逆です。
成長企業ほど売上→入金のサイクルを超えて支払が発生するので、資金的な手当てが必要になります。

成長の過程では、そのニーズを満たすために先に商品を大量に仕入れるとか、サービス業だと先に人材を採用しておくといったことが必要になります。

そうなると、入金よりも支出の方がサイクル的には早くなってしまい、結果として資金不足に陥ることが多いです。

それを避けるためにできることは3つしかありません。
「入金はできるだけ早く確実に」
「支出はできるだけ遅く」
「支出と入金の差は借入で賄う」

一つ目の入金に関しては「早く」入金してもらうだけでなく「確実」に入金してもらうことが必要です。

売上を上げても入金がなければ結局貸倒引当金を当てて売上がなかったことになりますし、売上があがることを予想して支出額を増やしているでしょうから、入金がないと結構きつい展開になります。

確実に入金してもらうためには

確実に売上をキャッシュに換えるにはいくつかのテクニックがあります。

「与信管理を行う」
「クレジットカード決済で回収する」
「先方が納得するサービスを提供する」

与信管理についてですが、端的に言うと「払ってくれない(支払い余力のない)顧客とは取引をしない」ということです。

これは結構大事で、いくら売上が立っても入金までいかないのでは意味がありません。そのため、取引の時点で払えなさそうな取引先をシャットアウトするということです。

これとは逆に「強制的に支払わせてしまおうとするアプローチ」がクレジットカード決済です。

クレジットカード決済にすると手数料が3-5%くらい取られますが、カード会社が回収を行ってくれますので、キャッシュフロー的にはかなり安心です。

一方デメリットとしては、案件単価が高いとどうしてもカード決済が難しくなってしまうので、どうしても案件単価が少ないものに限定されてしまいます。

そして、最後のサービス品質についてですが、これもキャッシュマネジメント上重要だと考えています。

どういうことかというと、人間の心理的に「満足したプロダクトにはお金を払う」という性質があり、裏を返すと、満足していない商品に対してお金を払うことには抵抗があるということです。

無論、契約している限りお金を払わなければならないのですが、商品に満足してないと支払うことに気後れすることがあると思います。

そう思わせないためにも、早く快く顧客から支払ってもらえるようにプロダクトの品質を上げるのは非常に重要です。