会計士の藤井です。

日々、中小企業経営者の資金調達の支援をしていて思うのですが、「経営者の力量」と「資金調達力」はかなり正比例するんです。

いや待て、「銀行は決算書をベースに融資をするか決めるから業績が最も大事だろ」という反論が聞こえてきそうです。

まあそのように言いたくなる気持ちもわかりますし一理あるのですが、少し私の話を聞いてください。

ということで、本日は経営者の実力と資金調達の関係について少しお話ししていきます。

決算書の業績は悪くないのに融資が否決される
実力のある社員を揃えているのに融資が出ない

本日はこのような疑問にお答えしていきます。

銀行側は常に経営者の実力を推し量っている

なぜ、決算書の業績は悪くないのに、融資が否決されてしまうのか?

それは、銀行側が「経営者としての資質」を疑問視しているからかもしれません。

正直に申し上げて「銀行側が貸したいと思える経営者」ではなかったということです。

当たり前ですが、銀行員も人です。
事業を伸ばして返済原資を作ってくれる経営者には貸したいと思う一方で、銀行の大切な資金を預けたいと思えない経営者にはどうしても融資を渋ってしまうでしょう。

ここで、経営者としての資質とは、①過去②現在③将来の観点から3つに整理できます。

①過去とは、経営者の過去の実績です。
今の事業を行う前のキャリアで、どのような実績を積んできたのか。過去の実績が凄いかた今の事業でも儲かるとは限りませんが、相当な割合で参考になります。

②現在とは、今やっている事業の把握度です。
中小企業の経営者となると、基本的に現在の事業について全てを答えられるようにしておかなければなりません。

営業は営業部長に任せているから、経理は経理部長に任せているから、という理屈は通りません。

細かい内容まで答えられる必要はありませんし、答えられない場合は後ほど確認でも問題ありません。

しかし、経営者たるもの事業の隅々まで把握して融資担当者からの質問を打ち返せるようにしておくべきです。

③将来とは、将来の展望を社長の言葉で語れるかです。
ここに関しても、社長の本気度や意気込みが重要になってきます。将来の数値計画は他の人が作っているから、ではなく、何がなんでも数値計画を実現させる気概を示しましょう。

このように過去・現在・将来にわたって経営者としての資質を問われるのが融資面談であるがゆえに、代役で社長を立てても残念ながら銀行側に見破られてしまうのがオチです。

あるいは、実務のことをわかっていない腰掛け社長が融資面談に臨んでも、面談ではボロボロになります。

これは正直ベースなのですが、弊社が支援している案件で、社長が資金調達に関与せずに部下の方が対面になっている案件で融資が決まった案件はありません。

日々考えながら事業を推進している社長の役割はそれだけ重いことの証左ですし、銀行側にも想いの強さは見透かされてしまいます。

そのため、中小企業においては他人に任せるのではなく、ぜひ社長自ら資金調達プロジェクトの最前線に立つことを強くお勧めしています。

正直、決算書はごまかせる

決算書の業績は悪くないのに融資が出ない、その理由には「ぶっちゃけ決算書はごまかせる」というのがあります。

はい、現役の会計士がぶっちゃけました笑
でもこれ本当なんだから仕方がないです。

というのも中小企業の会計基準においては上場企業向けの会計基準とは違って、実務上そこまでの厳格さは求められていないというのがあります。

そのため、中小企業向け会計基準に則りつつも合法的に利益操作が可能だったりするんです。

一例を挙げると「減価償却の未計上」ですね。
今期は赤字になりそうなので減価償却を少なめにすることだって合法的にできなくはないんです。

また、粉飾だってしようと思えばできてしまいます。

例えば「在庫のかさ増し」です。
帳簿上の在庫を実際よりも多くすれば売上原価が減るので利益は上がるという仕組みですね。

特に在庫は銀行側が棚卸しなどで確認できないので、銀行側としても粉飾の有無がないか目を光らせているポイントでもあります。

そういった意味で、決算書は融資審査に当たって重要な書類ではありますが、できる銀行担当者ほど決算書の中身を精査して、企業の実態を把握してきます。

そもそも経営者の実力があれば業績は良い

最後に、そもそも論で恐縮ですが「経営者の実力は最終的に決算書に現れてくる」というのもあります。

経営者としての力量があれば、それは決算内容も良くなるはずだ、というロジックですね。

無論、リーマンショックやコロナなど不可抗力な事象も沢山起こりますよ。

ただ、私の周りにいる「デキる経営者」はそのような不可抗力を所与として、柔軟に事業を組み替え、このような中でも業績を悪化させないか、あるいは業績を伸ばしています。

翻って、銀行側はどうか。
本当に有能な銀行担当者は決算書に頼らないと思います。

基本、経営者の力量を見て融資を決める。創業融資なら尚更です。

そういった意味でも、良い決算書の内容を作っていくのは重要ですが、そこに囚われてはいけないというか、最終的には経営者の実力に収斂していくのかなと思う次第ではあります。

まとめ

ということで、ここまで経営者の実力は資金調達力にダイレクトに影響するよ、というお話をしてきました。

決算を何度も経ている会社の場合、決算書の内容が融資に大きな影響を与えるので、経営者の実力という測定不可能な事柄で融資が決まるわけではない、と思う人も多いでしょう。

ただ、私が沢山の中小企業の資金調達を支援してきた経験から言えるのは、これです。

融資を受けれる社長は「経営力」が高いし「実力」もある。それにオーラもある。

大型の資金調達を決める社長には間違いなくそんな雰囲気というか「圧」があるんです。

そのオーラというものを一朝一夕で身につけるのは難しいですが、まずは資金調達を他人任せにすることを止めることから第一歩が始まります。