会計士の藤井です。

事業承継準備には財務・法務・人事労務などの管理部門の磨き上げも重要ですが、それらと同じくらい重要なのが御社のビジネスの見える化・磨き上げです。

事業承継やM&Aを行う大目的は、後継者が誰になるであれ事業が継続的に発展していくことです。

その継続的な発展を担保するためにも、事業承継の準備段階で自社の事業について分析・棚卸をしておくことが、事業承継後に直結します。

そこで、本日は事業承継における事業の磨き上げについていくつか解説していきます。

自社の強みがいまいちよく分かっていない
今後の事業計画を作ってみたが不安がある

本日はこのような疑問にお答えします。

自社の経営環境は把握できていますか?

まず第一に自社の外部経営環境について理解できていることが重要です。

ビジネスは常にマクロ経済や属する市場や業界動向の影響を受けるものであり、引き継ぐ側としても今後のビジネスを占ううえで高い関心を持っています。

そこで、自社が置かれている外部環境については一度整理しておくことが望ましいです。

具体的な外部環境分析の手法としては、3C分析やPEST分析があります。

3C分析とは、自社(Company)、競合(Competitor)、顧客市場(Customer)の観点から企業を分析する手法です。

自社はどのような強みを持っているか、競合の特徴及びどのように競合と差別化していくか、顧客は誰か、市場規模は伸びているか縮小しているか、などが分析対象となります。

一方、PEST分析は、政治(Politics)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の観点から企業を分析するフレームワークです。

自社に関連する規制の状況、為替・金利の状況、人口動態や価値観の変容、関連する技術の進化などを自社に当てはめて考えてみるきっかけとなるでしょう。

なお、3C分析はより身近でミクロな分析、PEST分析はより規模が大きくマクロな分析に向いています。

自社の強みや弱みは理解できていますか?

上記の外部環境分析とも少し重なる点があるのですが、自社の内部環境においても整理しておくとよいでしょう。

内部環境とは主に自社の「強み」と「弱み」を指します。

自社の強みといってもピンとこない方もいらっしゃると思うので、一例をあげると以下のようなものが挙げられます。

  • 製品の品質に自信がある
  • 圧倒的なマーケットシェア
  • アフターケアの体制が整っている
  • 出荷までのスピードが速い
  • 大手企業との取引実績がある
  • 多くの特許を保有している etc

強みといっても様々で、単純に製品の品質が良いだけが強みではないという点に注意が必要です。

例えば、地元密着で特定の商圏でのマーケットシェアが高い場合は、その商圏に進出したい競合他社が外部承継の担い手になることもありえます。

一方、自社の弱みについても整理しておくことが肝要です。

  • 特定の取引先に依存している
  • 重要な業務を他社に外注している
  • 重要な商材に関して特許を取れていない

この中でも主要取引先が集中している場合はその1社から高い売上を見込める代わりに、万が一取引が終了した場合は売上も激減するので、強みにも弱みにもなりえます。

ここまで自社の強みと弱みについてみてきましたが、自社の強みは伸ばしつつ、事業継続できなくなるほどの致命的な弱みについてはなるべくバックアップ策を練っておくのが望ましいです。